『なつぞら』公式サイトより引用

視聴率20%超!広瀬すず『なつぞら』が「時代風景を描かない」意味

これは新しい朝ドラだ

時代を「描かない」珍しい朝ドラ

朝ドラ『なつぞら』は、主人公がアニメーション製作会社で働き始めた。

舞台は昭和31年である。

歴代の朝ドラヒロインが次々と脇役で登場してきて、それはなかなか楽しい。

北海道での高校編から東京アニメーター編へと移ったわけだが、この朝ドラには1つ不思議な特徴がある。

時代をあまり描かない。どの時代を生きているのか、あまり描写されない。

いちおう昭和31年らしい。しかし鳩山一郎も石橋湛山もアイゼンハワーもプレスリーも石原慎太郎も出てこない。昔ふうの風俗が描かれているが、細かく主張しないので、ぼんやり見てると昭和27年なのか昭和31年なのか、昭和35年なのかはわからない。

朝ドラは時代を細かく描くことが多い。

主人公たちの生きている時代も色濃く描き、その時代の生活もリアルにおもいださせてくれる。この「昔をおもいださせる(ないしは想像させる)」というのが朝ドラの大きなひとつの機能である。

1つ前の朝ドラ『まんぷく』(2018年後期)は昭和10年代から40年代までの世相とともに発明家夫婦の姿を描いていた。昭和の風景なしにはあのドラマの味わいは出ない。

 

その前は『半分、青い。』(2018年前期)で、これは比較的新しい時代だった。1970年代から80年代90年代の世相をかなりヴィヴィッドに描き(すこし流行歌に頼っているところはあったが)いまの中高年層に「ああ、あの時代」とおもいださせる力を持っていた。

『わろてんか』(2017年後期)は明治から大正にかけての世相を細かく描いていた。ちょっと時代劇ぽかった。

『ひよっこ』(2017年前期)はめずらしく1960年代半ばに固定されていたが、そのぶん1960年代の世相と流行をしっかりと描いていた。東京五輪とか集団就職とかビートルズ来日とかツィッギーとか。

ドラマをおもいだすと、同時にそこに描かれていた時代背景もおもいだす。朝ドラはそういうふうに作られている。

『おしん』(1983年)は明治時代の貧村から描かれ始め、幼いころから奉公に行く姿はせつなさを呼び起こすとともに、明治日本の貧窮をしっかり描いていた。『おはなはん』(1966年)は、日露戦争の日本の姿から描かれていた(たしか結婚相手が日露戦争に出征したはずである。ぼんやりと覚えている)。