photo by Getty Images

「米中新冷戦は20年続く」は本当か? 中国専門家が徹底考察

経済危機、覇権凋落に行き着くまで……

米中貿易交渉は、4月まで交渉を積み重ねてきた合意文書案を、5月初め中国がいきなり大幅に削除修正したことで暗転した。トランプ大統領は即座に昨年末から留保していた関税引き上げを決定、中国もこれに対抗する措置を発表して、貿易戦争が再燃した。

4月初めには「5月にも妥結か」と楽観的な見通しが専らだったのに、中国が突然これまでの柔軟な交渉態度を翻したのは何故か。

 

昨年秋に急減速した景気が財政大盤振る舞いのおかげでやや持ち直したので、中国に強気が戻ってきたこともあるだろう。

米側の要求が次々に引き上げられ、一部の要求が「中国が昔、苦しめられた不平等条約を思い起こさせた」(中国識者の表現)こともある。「国家の尊厳や原則に関わる論点」となると、中国人は強く反応する……お馴染みの光景だ。

しかし、「態度急変」の最大の原因は、米国が安全保障リスクを理由に、ファーウェイなど中国企業をボイコットする政策を一層エスカレートさせたことだろう。

昨年8月に議会が制定した「2019国防権限法」で、政府調達からの排除が決まり、昨年秋には同盟国に通信ネットワークからファーウェイらを排除するよう求めた。ところが、この要請に対して、ドイツ、はては英国までもが異論を唱えた。今年2月頃の話だ。

このことに衝撃を受けた米国の安保・対中タカ派は、それ以降「それならば米国単独で世界からファーウェイを追放してみせる」とばかり、手段をエスカレートさせたように感じる。

それが正式のかたちになったのは、交渉暗転後の5月15日に発表された2つの措置だが、どちらも昨年からタカ派陣営がファーウェイに向けて用意していると噂されてきた措置だ。

1つは、米国企業が安全保障リスクのある通信機器を調達することを禁ずる大統領令、もう1つがファーウェイに対する米国技術の輸出(第三国企業による再輸出を含む)を規制するために、商務省がファーウェイ関連企業を規制対象となる「エンティティ・リスト(ブラックリスト)」に載せたことだ。これで物品にせよサービスにせよ付加価値の25%以上が米国由来なら、事実上ファーウェイへの輸出ができなくなる。2つ合わせて「売るな・買うな」両面のボイコットになる。

2月15日公開の記事「米中ハイテク冷戦、実は米国と同盟国側が衰退する恐れアリ」でも論じたように、米国でハイテク冷戦を主導しているのはトランプではなく、議会・諜報機関・軍・各省庁・シンクタンクなど、組織横断的な「安保・対中タカ派」だ。

トランプの貿易交渉は駆け引きが感じられるが、タカ派が主導する過激なファーウェイ封じは妥協の余地が感じられない。

しかし、両者の違いが識別できない中国は、トランプが「右手で握手して左手で殴っている」ように見える。「幾ら譲歩しても、トランプはファーウェイ潰しをお構いなしに続けている」「トランプに騙されているのだ」という反発が一挙に強まった。