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ドイツ政治が陥った「ベルリンの壁崩壊以来最大」の窮地

そしてメルケル首相は去っていく

2大国民政党の没落

6月2日、SPD(ドイツ社民党)の党首、アンドレア・ナーレス氏が、突然、党首と、SPD院内会派の長の両方を辞任すると発表した(公式辞任は翌3日)。理由は、「責任を持って党を運営していくために必要な党内の支持を受けられなくなったから」だそうだ。

実は、 その1週間前の欧州議会選挙におけるSPDの大転落のせいで、党内で責任のなすりつけ合いが起こり、ナーレス氏が激しい攻撃に晒されているという噂が国民の耳にも届いていた。だから、このニュースに、「やっぱりな」と思った人は多かったが、その後、さらにナーレス氏は議員も辞めて、政界から完全撤退すると発表された(時期は未定)。

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こうなると、氏の憤りというか、「もう、やってられるか!」的な雰囲気が濃厚に伝わってくる。「誰か、もっと上手くやれるんだったら、よろしくどうぞ」ということだろうが、これが巷の喧嘩ではなく、国政の中枢で起こっているというのが怖い。ドイツの政治はかなり危ない。

しかし、落ち込んだのはSPDだけではない。今回の欧州議会選挙では、CDU(キリスト教民主同盟)も、予想よりもさらに壊滅的な状態であるということが明白になった。

CDUの得票率は、前回、5年前の欧州議会選挙より7.4ポイントも落ち込み、たった22.6%。SPDは、マイナス11.5ポイントでわずか15.8%しか票が取れず、急伸した緑の党(20.5%)に5ポイントもの差をつけられ、第3党に転落した。つまりドイツでは、CDUとSPDというかつての国民政党が、揃って没落しているのである。

SPD幹部は、その責任をナーレス氏に押し付けようとしたのだが、では、新規まき直しを図るために前倒しが決まった党首戦で、誰か名乗りを上げるかというと、誰も上げない。

今年の秋にはドイツ東部の3州で州議会選挙があり、おそらくSPDの敗北はさらに続くはずなので、そんなとき党首になってその責任を負わされるのは真っ平御免なのだろう。SPDは糸の切れた凧どころか、糸が切れて地面に落っこちて、骨の折れた凧のように弱っている。

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ただ、リーダーがいないのは困るので、大慌ての妥協案として、3日に、3人のSPDの政治家が共同で、暫定的に党を運営すると決まった(秋に正式に党首が選出されるまで)。現在、州首相をしている女性2人と、その他1名の男性の政治家だが、3人とも、党首戦には立候補しないと表明している。つまり、党の幹部自身が、SPDの復活を信じていない? あるいは様子見?

 

なのに、よりによって現在のドイツでは、この衰弱したSPDとCDUが連立を組んで「大連立」政権となっているのだ。しかし、言うまでもなく、今や、この2党に、CDUと同会派のCSU(キリスト教社会同盟)を合わせても、実際の支持率は50%に届かない。

つまり、実態は大連立ではなく、満身創痍のCDUと寝たきりSPDによる、いわば「幻の大連立」なのである。

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