IT立国・ルワンダの首都を牛耳る中国人経営者たちの野心と本心

安田峰俊・チャイナフリカを往く②
安田 峰俊 プロフィール

ルワンダの首都を支配する浙江人財閥

ところで、ルワンダでおそらく最も強い影響力と財力を持っている地場系の華僑財閥は、実はC&Hではない。「2000集団」という変わった名前の浙江省系のグループである。

2000集団の総帥は繆満仙(ミャオ・マンシエン)氏という。浙江省麗水市出身の比較的高齢の女性で、なんとルワンダ内戦の終結からたった2年後の1996年に現地に進出。キガリ市内の中心に「T2000」という新型のターミネーターのような店名のスーパーを開業し、やがて一族とともにホテルやレストラン・オフィスビル経営にも手を伸ばした。

2000集団傘下のレストラン(上)、スーパー(左下)、ホテル(右下)。レストランとホテルは一級だが、スーパーだけは中国の地方都市のような雰囲気。2018年4月安田撮影

私は2000ホテルに長逗留し、仲良くなった複数の中国人従業員たちを通じて繆氏へのインタビューを何度か申し入れたのだが「表に出たくないから」という理由で(同じフロア内の執務室にいるにもかかわらず)対面を拒否された。

もっとも、これは私が日本のメディア関係者だったからではない。ルワンダ市場への新規参入組であるC&H社の馬暁梅が、CCTV(中国の国営放送)からビジネス誌までメディアに積極的に露出しているのに対して、2000集団の繆氏は人民日報のような「政治的に正しい」媒体の取材すらも過去にほとんど受け入れていないからだ。X氏のかわりに、2000ホテルの従業員に話を聞いてみた。

「現在、グループ全体で従業員は100人ぐらい、そのうち中国人社員は(経営陣以外は)10人ぐらいです。グループ現代表の呉文俊総経理は繆氏の娘婿にあたり、ホテル事業と、最近ルワンダで展開しているインターネットテレビ事業を手がけています」

2000集団の中国人従業員たちは、レストランのコックを除く大部分が浙江省出身者で固められている。外部に情報を出さず、地縁と血縁がある者しか信用しないのは、伝統的な華僑ビジネスの世界では珍しくない話だ。

 

ジャック・マーがお忍びで…

2000ホテルは、米国系のマリオットホテルや、映画『ホテル・ルワンダ』の舞台になったオテル・デ・ミル・コリンに次ぎ、市内では外国人によく宿泊されるホテルであり、特に中国人出張者の大部分はここに泊まっている。併設されたレストランでは陝西人と四川人のシェフが働き、アフリカの地にもかかわらず本場の水準の中華料理を食べることができる。前出の従業員は言う。

「去年の秋、ジャック・マー(馬雲)がお忍びでうちのレストランに食べに来ていたんですよ。それを知らないで、エレベーターで鉢合わせしてしまいました」

ジャック・マーは、言わずと知れた中国のIT最大手アリババグループの創業者で、中国有数のIT長者だ。マーは今年1月にアリババのECサイト「eWTP(世界電子商取引プラットフォーム)」のアフリカで最初の拠点をルワンダに設置しており、その前から何度もキガリに来てカガメ大統領と会ってきた(ほか、最近話題のファーウェイも、2017年からICT分野でのルワンダへの進出を始めている)。

ピーターのガールフレンドが使っていたのは中国のスマホメーカー「伝音」製品だった。伝音は中国国内では無名だがアフリカ市場で圧倒的に強く、世界のスマホシェア5位となっている。2019年4月撮影

上はマーのようなS級中国人から、下は一般の出張者までやってくる、ルワンダにおける中国人たちの拠点が2000集団のビルなのである。

「去年7月に習近平主席がルワンダを公式訪問してから、中国人ビジネスマンのお客さんがさらに増えた印象ですね。金属製品や電子製品の売買をおこなう小規模事業者と、資源系やゼネコン系などの大手国有企業からの出張者が多い印象です」

習近平のルワンダ訪問は、中国の国家主席としては歴史上初だった。この訪問ではカガメ政権側と空港や道路の建設について大量の援助に合意したほか、習政権が提唱する一帯一路構想へのルワンダの参加を歓迎する声明を出した。

米中対立が激化し、あたかも米中両陣営による世界の分裂が進んでいるように見える昨今、中国は「友好国」の確保に躍起になっている。アフリカの政治・経済・社会の中枢に食い込む中国人ビジネスマンたちの重要性はいっそう高まりつつあるわけなのだ。

本文中で登場したC&H社は取材後に売却され、現在はC&Dと社名を変更して操業を続けている。チャイナ・アフリカビジネスの変動はかくも激しい。

(第三回に続く)

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