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「中年息子の引きこもり」事件で明らかになった「8050」問題

あなたの隣家も実は…

中年の引きこもり息子と、その親。両者が続けざまに起こした事件によって、高齢化にともなってこの国でひっそりと進行している問題が浮き彫りになった。苦悩しているのはあなたの隣人かもしれない。発売中の『週刊現代』では、「8050」問題について特集している。

腕力では負ける

「英一郎君が、中学1年生のときからすでに家の中の物を壊したり、お母さんに暴力を振るったりしていたという報告は受けていました。学校でも、周囲からちょっといじめられたりすることもあって、ストレスを溜めていたのかもしれません。

勉強は好きではなく、成績は芳しくなかった。あの学校では、小学校では飛び抜けて優秀でも、自分よりできる子がゴロゴロいるので、ショックを受ける子供も少なくありません。

とはいえ、彼の場合はお父さんも華麗なる履歴の持ち主で、学歴への信仰は強かった。

インターネット上でお父さんのことを自慢していたという報道を見るにつけ、『自分はこんなはずではない』という強いコンプレックスが、彼の生涯に暗い影を落としていたのかな、と思います」

沈痛な面持ちでこう語るのは、元農水事務次官の父・熊澤英昭容疑者(76歳)に殺害された、熊澤英一郎さん(44歳)の高校時代の担任教員だ。

英一郎さんが通っていた私立・駒場東邦高校は、毎年50人以上を東京大学に送り込む、都内有数の中高一貫の進学校だ。

在学中は親しい友人もおらず、部活にも入らずにゲームに熱中していた。

「大学受験に失敗し、浪人して1年目か2年目に、突然高校に現れて『アニメの学校に合格した』と報告してきました。そのとき、アニメの楽しさを一席ぶった。気分が高揚していたのでしょう。

その後は、日本大学の理工学部土木工学科に進学したと聞いています。在学中は文系だったので驚きました。

お父さんの影響でしょうか。長く別居していたということですが、生活費はお父さんがずっと出していたのだと思います」(元担任)

 

その後、流通経済大学の大学院に進学しCGについて学び、'01年に修了。大学院卒という肩書は得たものの、彼が定職に就いたという話は一向に聞こえてこない。

本人は「パン職人の資格を持っている」と周囲に語っていたが、実際には親の脛をかじりながら同居生活を送っていた。親元を離れたこともあったが、事件の10日ほど前に老親の暮らす実家に舞い戻ったという。

その直後から、両親への暴力が始まった。老親にとっては、中学時代に息子がいじめを受け、母親に暴力を振るうようになってから繰り返された悪夢の日々が、ふたたび始まったのだ。

昔はその気になれば腕力で抑え込むこともできただろうが、76歳の父親にもうその力は残っていない。

「川崎のような事件を起こさないか不安だった」という熊澤容疑者の心境も、かなり切迫したものだったのだろう。だが、近隣では、熊澤容疑者が息子と同居していたことすら気づいていなかった。