「えーっ、なんだよ……と。その時点ですでに結婚を後悔していたんですけど、妊娠してるし籍も入れてしまったし、いまさら引き返せないから我慢するしかなくて。お金は私の母に借りて返し、元夫の給料は私が管理して少しずつ母に返済することで、なんとかやっていこうと思ったんです」

そのころ元夫は、介護施設でアルバイトをしていた。和恵さんは妊娠中から社会保険労務士の資格を取るために勉強を始め、出産後に合格。社会保険労務士事務所に勤め始めた。とはいえ、幼子を抱えてバリバリ働けるわけでもない。

「まあ、貧乏ですよね。母への返済も残っているので、元夫にはほとんど小遣いを渡していなかったんですが、そうしたら私の財布からお金を盗むようになっちゃったんです。といっても、お菓子やジュースを買うくらいなんだけど、なんかもう大人の男がすることか、とがっかりしちゃって」

叱ると「ごめんなさい」と謝るが、懲りずにまた盗る。財布を隠しても、探し出しては盗っていく。家事や子どもの世話など言えば多少手伝うが、言われなければ何もせず、寝転がってゲームをしている。仕事も気軽にすぐ休む。和恵さんが残業で遅くなるとき、保育園に子どもを迎えに行くよう頼むと、「はーい」と返事だけはいいが、寝ていて忘れることもよくあった。

財布を隠しても隠しても見つけてお金を取られた Photo by iStock

「そう、高校生くらいのだらしない子どもみたいな感じ。素直だし、悪い人じゃないんだけど、こっちは本物の子どもの世話で大変なんだよ! って、頭にきちゃって」

夫を責め立てた日々

正しいのは圧倒的に私。そう思い込んでいたから、元夫を責めたてた。けちょんけちょんに言い募った。

5年間、喧嘩ばかりの毎日でした。そうしたら元夫は鬱っぽくなっちゃって、大阪の実家に帰ってしまったんです」

「大きな息子」にうんざりしていた和恵さんは、「もう帰って来なくていい」と思い、「離婚しませんか」と電話をかけた。元夫は「えー」といったん渋ったが、電話を切り6時間後にかけ直してきて、「そうしましょう」と答えた。それであっさり離婚となった。

「ふうっと楽になりました。たぶんお互い、相当我慢していたんだと思います。元夫も自分が悪いとわかっているから、自分からは離婚を言い出せなくて、耐えに耐えて病気になっちゃった。私も、子どもみたいな人だけど縁あって一緒になったんだから、責任もって面倒みなきゃ、と思い込んでいた

離婚は残念な結末には違いないが、「一生こんな暮らしなのかな」という絶望からは、お互い抜け出せた