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# 米国

「逆イールド」の米国経済、リセッション入りの可能性が上昇中

FRBの金融緩和転換はいつか

FRBの呑気な問題意識

6月4日、FRBのパウエル議長は近い将来の利下げを示唆する発言を行った。これによって、下げ基調が強まりつつあった米国株式市場が一応は反発した。

だが、発言内容をよくみていると、必ずしも早い時期での金融緩和を示唆したわけでもないのではなかろうか(米中貿易摩擦の影響で景気が急速に悪化したら利下げするとは言っているが、それは当たり前である)。

どちらかといえば、パウエル議長の問題意識は、「現在の米国経済が比較的堅調を維持しているにもかかわらず、インフレ率がFRBの想定シナリオ通りに上昇する気配が全くないこと」であるように思える。

つまり、パウエル議長は、今後もインフレ目標(これはFRBが想定する適正なインフレ率と言い換えてもよいだろう)を恒常的に下回る状況が続けば、家計や企業のインフレ予想が下方修正され、それがやがては将来の成長期待を後退させること、もしくは、低インフレを背景とした低金利がこのまま続くと政策金利を操作するという意味での金融政策の余地が低下したままになることを懸念していると思われる。

そのため、6月4、5日の2日間にわたって、FRBは識者を交え、新たな金融政策の枠組み作りのための研究会を開催しているという。

だが、現在の米国経済の状況を考えると、パウエルFRB議長の問題意識はかなり呑気であると言わざるを得ない。

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このところの米国景気はかなり減速感が鮮明になりつつある。例えば、企業の景況観をあらわすISM景況観指数は、5月の製造業が52.1ポイント、4月の非製造業が55.1ポイントとなった。ISM景況観指数は50ポイントが景気判断の分かれ目であり、製造業、非製造業とも直近ではまだ50ポイントを上回ってはいるものの、いずれも昨年9月から低下基調を強めている。

さらにいえば、アトランタ連銀が算出しているナウキャスト指数である「GDPNow」は、6月3日時点で前期比年率換算で+1.3%まで低下している。この「GDPNow」は6月3日までに発表された経済指標を元にリアルタイムで実質GDP成長率を推計する方法であるが、2019年1-3月期の実質GDP成長率は前期比年率換算で+3.1%だったので、足元の米国経済が大きく減速していることを示唆している。

 

米国景気が循環的にピークアウトするという話はここ数年、年中行事のように毎年言われ続けていたが、ここまでは全く実現してこなかった。これは、ある分野が減速するとその代わりにそれまで減速していた分野が回復し、相殺してきたからである。

具体的にいえば、2015、2016年頃までは、住宅投資と自動車販売が堅調で米国経済を牽引していたが、これが2017年頃にピークアウトし減少局面に入ると、それまでは不振だった設備投資、輸出が増加に転じ、米国経済を牽引してきた。

だが、ここにきて、輸出(製造業の業況につながる)が減速しつつあり、設備投資の主力であったIT投資もピークアウトの兆候が出始めている。そして、そろそろ底打ちしてもよいはずの住宅や自動車も依然、調整局面から抜け出す兆しはない。