日本の公的年金150兆円が全額「ESG投資」にシフトしている理由

そもそもの現実を知っていますか?
夫馬 賢治 プロフィール

GPIFはこれに飽き足らず、さらに強力に運用会社にエンゲージメントや議決権行使をさせる手法を導入しようとしている。それは、運用会社の役職員の人事査定の中に、エンゲージメントの実施状況に関する内容を組み込むことだ。

そうすれば、役職員は高い給与をもらったり、昇進しようとするならば、エンゲージメントや議決権行使をしなければいけなくなる。その結果、GPIF以外の投資家に対してもESG投資を推進するようになる。GPIFは、人事査定という大きな影響力に着目したのだ。

しかもそのKPIも「○○社と話をした」というような上辺のものではなく、エンゲージメントの質を問うものを検討している。GPIFの資料によると、対象は運用会社のCEO、CIO(最高情報責任者)、ファンドマネージャー、スチュワードシップ責任者を想定し、現在、具体的な役職員報酬での目標設定の仕方を見定めている。

 

様変わりする株主・債権者との付き合い方

投資意思決定でESGを考慮する手法で出発したESG投資も、今やエンゲージメントや議決権行使でESGを迫るタイプのものの存在感が大きくなってきた。

GSIAの統計によると、エンゲージメント・議決権行使型のESG投資額は世界で約10兆米ドル(約1,100兆円)。言うなれば、資産規模の巨大な投資家が、こぞって「もの言う株主」となってきている。さらに、債券保有者からもエンゲージメントが始まりつつある。

日本では、かつて「シャンシャン総会」という言葉があった。株主総会で、株主からの提案を封じ込め、経営陣側の思うように株主総会を進める慣行を指したフレーズだ。

しかし、ESG投資の興隆により、「シャンシャン総会」はおろか、取締役の選任にさえ、経営陣側の思うままに進まなくなってきた。ESG投資が始まり、企業は株主や債権者との付き合い方を是正する必要が出てきたのだ。

日本の公的年金150兆円を運用するGPIFは、日本最大かつ世界最大の機関投資家である。そのGPIFが全額、ESG投資している現実を、全てのビジネスマンは認識するべきだと思う。

今後、ESG格付けの低い企業は生き残れなくなる。すべての上場企業は従前の目先の短期的な利益優先主義やPL思考から意識の転換が必要不可欠になってきている。