日本の公的年金150兆円が全額「ESG投資」にシフトしている理由

そもそもの現実を知っていますか?
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GPIFのエンゲージメントとは?

GPIFのエンゲージメントや議決権行使の手法をもう少し詳しくみていこう。これを知らなければ、上場企業の大株主になっているGPIFが、何をどのように要求しているかがみえてこないためだ。

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まず、GPIFは、投資先企業へのエンゲージメントや議決権行使を、全てGPIFが運用を任せている運用会社を通じて行っており、直接的な影響力は行使していない。

その理由は、GPIFは法律により直接的な議決権行使やエンゲージメントが禁止されており、やりたくてもできないためだ。そこで、GPIFは、運用会社に対し、投資先企業への議決権行使やエンゲージメントを推進させる手法を、短期間にいくつも編み出してきた。

まず、運用会社に対する評価体系を変えた。

GPIFは、運用会社を公募で選定しているのだが、運用会社の成績評価において、以前は投資方針や組織・人材に対する評価が、国内株パッシブ運用では85%、外国株パッシブ運用では95%と高かったが、これを70%にまで引下げ、残り30%をスチュワードシップ活動内容、つまり「エンゲージメント内容」で判断することにした。

株式アクティブ運用の運用会社の評価における「エンゲージメント内容」の比率も10%まで高めた。

そのため、GPIFから運用を委託されるには、中長期のエンゲージメント活動のゴール設定や、達成に向けた年間計画、エンゲージメントを行う体制や責任者等を定めた上で、毎年実施状況を振り返らなければいけなくなった。

 

加えて、ESGインデックスで選定された運用会社だけでなく、全運用会社に対し、PRI(責任投資原則)への署名も促している。

PRIとは、2006年当時の国際連合事務総長であるコフィー・アナンが金融業界に対して提唱したイニシアティブで、機関投資家の意思決定プロセスにESG課題(環境、社会、企業統治)を受託者責任の範囲内で反映させるべきとした世界共通のガイドライン的な性格を持つ。

つまりGPIFが運用を行う150兆円は全てPRIに従っているということだ。