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日本の公的年金150兆円が全額「ESG投資」にシフトしている理由

そもそもの現実を知っていますか?

2018年、世界も日本もESG投資は大きく増加

ここ10年ほどの間で、世界の投資マネーがESG投資というものにシフトしているのをご存じだろうか。ESG投資は特に機関投資家の間で増加している。

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現在、世界の投資マネーの総額は1京円(1兆の1万倍)だが、2018年の実績では、世界全体でESG投資は過去2年で34%増加し、30兆6,830億米ドル(約3,418兆円)。世界の総投資額の3分の1超に成長した。

地域別では、もともとESG投資の割合が多い欧州とともに、オセアニアでも約50%にまで到達。アメリカも過去2年で22%から26%へと増えた。そして何より一番増加率が大きかったのが日本で、過去2年で3.4%から18.3%へと急進した。その額232兆円にもなる。

ESG投資とは何なのか。ESGとは、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の頭文字を取ったもので、投資家が投資先企業を選ぶ上で、ESGを考慮する手法のことを言う。

従来の投資手法は、企業の売上、利益、利益率や財務安定性等だけで企業の有望性を評価していたのに対し、ESGは環境や社会的な内容も重視するという点が大きな特徴だ。

日本でESG投資を大々的に採用したことで話題を呼んだのは、日本政府の公的年金基金である年金積立金管理運用独立行政法人、通称GPIFだ。2017年には、ESGを重視した株式インデックスを3本採用し、運用を開始。運用額は当初は1.5兆円ほどだったが、現在は約3兆円にまで拡大している。

しかし、GPIFが実施しているESG投資のことを、多くの専門家も正しく認識していない。例えば、GPIFが実施しているESG投資の金額について、ESG株式インデックスで運用している金額の3兆円をもって、「GPIFのESG投資額は3兆円」と認識している人がいるが、これは大きな誤りだ。

GPIFの現在の運用額全体は150兆円を超えるが、このうちESG投資で運用している金額は幾らかというと、答えは「150兆円」。そう、GPIFは、じつは投資金額の100%でESG投資を行っている。この150兆円を含めて、日本のESG投資の総額は、前述のように232兆円と大きな数字になっているのだ。

 

ESG投資とはなにか

GPIFのESG投資額が「150兆円」なのに、「3兆円」だと勘違いしている人は、ESG投資の定義をしっかり抑える必要がある。

ESG投資の定義は、ESG投資の世界的統計をまとめている国際団体GSIA(Global Sustainable Investment Alliance=世界サステナブル投資連合)が定めており、ESG投資の手法を7つに分類している。

その中でも有名なのが、投資先企業の将来性を鑑みる際に、財務数字だけでなく、環境や社会への考慮の状況やガバナンスの状況までも考慮に入れる「ESGインテグレーション」と呼ばれる手法。

GPIFが2017年に採用した3本のESG株式インデックスも、このタイプのもので、上場企業毎に付けられたESGスコアを活用し、最終的な投資先や投資金額を決定している。そして、GPIFが実施している「ESGインテグレーション」タイプのESG投資額は、3兆円である。

ただしGPIFはこの3本以外の投資も、ESG投資の手法をすでに採用している。それが「議決権行使・エンゲージメント」と呼ばれるタイプだ。

これは、ESGインテグレーションとは異なり、投資先の企業に対し、株主や債権者という影響力を行使して、GPIFが投資先企業の事業方針へ介入するというものだ。ときには、株主総会で、取締役を変えてしまったり、経営陣側が嫌がる事業転換を強制させたりしてしまう。

GPIFは、2017年10月に自身の「投資原則」を改定した際に、全ての投資において、議決権行使やエンゲージメントを行うことを決めた。すなわち、GPIFが株式や債券を保有している企業に対し、「モノ言う株主(または債権者)」として、ESGスコアを上げるよう要求している。

これが金融市場での大変革を生み出した。