# 不正

「私はこうして武器商人にまつりあげられた」冤罪を訴える男の全告白

5月、有罪判決が下された
隼二郎 プロフィール

義足や車椅子に使うカーボンを開発していたが…

「私が炭素繊維の製造に関わっていたのは、軽くて丈夫な素材の強みを活かし、障害者向けの義足や義手の開発を行なっていたため。

パラリンピック仕様の車椅子や、特殊なカーボンを使った革新的な人工関節の開発・販売も計画していました。私自身、体が不自由で、義足をつけている身ですから、少しでもそういった方たちの力になりたかったんです」

photo by iStock

「実際、2016年の暮れには、事業の正当性を認めていただいた銀行から融資も受けられて、『さあ、これから』という時に逮捕ですからね。事業はもちろん、人生をムチャクチャにされたようなものです」

この事件では、松原氏の他に、輸出に関わったとされる2名の会社役員らが逮捕されているが、いずれも広島地検が「事実を認定するに足りる十分な証拠がない」として不起訴処分にしている。

だが、松原氏は同様の「鉄製炉体」を計3回にわたって無許可で輸出したとされ、再逮捕を経て2017年4月19日に起訴される。一緒に輸出事業を行った2人は証拠不十分で不起訴なのに、なぜ松原氏だけが起訴されるのか。「見せしめ」という言葉が真実味を帯びる。

 

407日の拘留で心臓病が悪化、家族は…

「逮捕以降、勾留期間は407日間にもおよびました。私は心臓に持病があるのですが、その間、必要な投薬を中止されたため、以前は正常だった心臓右冠動脈が25%も閉塞していて、今でも息苦しさを覚えることがあります。

当初は保釈どころか、家族との面会すら認められませんでした。ようやく広島拘置所内で家族に対面できたのは、逮捕から9カ月以上経った2017年の12月のことでした。

しかし、私以上につらい思いをしたのは家族たちです。逮捕されたという事実だけが広まり、地元では村八分のような扱いを受け、妻は心労がたたって大病を患ってしまいました。2人いるうちの下の息子は大学生で、ボランティア活動が認められて大分県警への就職が決まっていたはずが、その話もなくなっていました」

いわれのない罪で、障害者向けの事業は暗礁に乗り上げ、家族たちも大きな傷を負った。それでも、「無罪」を勝ち取れば事態は好転するかもしれない。そんなかすかな希望を胸に、2018年3月に始まった公判では一貫して無実を主張してきた。

「検察側が要請した証人たちの中には出廷を拒否した者もいます。なぜなら、検察が捏造した調書に沿った証言を法廷で行うと、偽証罪に問われるからです。

検察側の証人として、外為法を運用する経済産業省の役人が出廷したこともありましたが、今回の輸出事件の違法性について問われて、『ケースバイケース』と答えるのがやっと。その時は裁判官も呆れていました」

およそ1年間にわたる長い審理を経て、今年2月22日の論告求刑で、検察は「1500万円の罰金と懲役2年」を求刑。3月4日の最終弁論では、裁判官が松原氏に「言いたいことを言ってください」と、これまで不条理な追及を受けてきた松原氏をねぎらう場面も見られたという。

だが無情にも、下されたのは有罪判決だった。筆者も松原氏が裁判所に提出した証拠書類を確認したが、それを見る限り、松原氏が輸出した「部分品」が武器製造に活用されるほどの仰々しいシロモノとは思えない。