衝撃…中国で子供を狙った「無差別殺傷事件」が頻発していた

貧富格差が騒乱につながって…
北村 豊 プロフィール

今もなお収まってはいない

こうした小学校の児童や幼稚園の園児を標的とする無差別殺傷事件は上記の事件から10年以上も経過した現在も続発している。その代表的な例を次に挙げる。

(A)2018年4月27日午後6時10分頃、陝西省楡林市米脂県に所在する米脂県第三中学校付近にある狭い坂道で、待ち伏せていた男が所持していた刃物で下校途上の中学生を次々と襲撃し、21人の中学生を死傷させた。この内訳は、死亡9人(女7人、男2人)、重傷4人、軽傷8人であった。駆け付けた警察官によって現行犯で逮捕された男は、1990年1月20日生まれで当時28歳の趙沢偉であった。
彼は米脂県第三中学校の卒業生で、在学時代に同級生たちに嘲笑されたことを根に持ち、現在の仕事も生活も順調でないことの原因を馬鹿にした同級生たちの責任に帰し、その身代わりとして母校の現役中学生を襲って復讐を果たそうとしたのだった。被害者の中に女子生徒が多かったのは、男子生徒は彼女たちより逃げ足が速かったためだという。
被疑者の趙沢偉は5月28日に故意殺人罪で起訴され、7月10日に死刑判決を受けた。趙沢偉は判決直後に上告をほのめかしていたが、翌日には上告しない旨を表明して被害者に謝罪し、9月27日に米脂県で死刑の執行を受けた。
(B)2018年6月28日午前11時30分頃、上海市徐滙区に所在する世界外国語小学校浦北校区の正門から100メートルの地点で、包丁を持った男が突然下校する児童に襲い掛かり、児童2人が死亡、児童1人と子供を迎えに来た女性1人が負傷した。
男はその場で周辺にいた人々の協力によって捕捉されたが、その後の取り調べによって無職で28歳の黄一川だと判明した。被疑者の黄一川は6月初旬に湖南省から職捜しで上海市入りしたが、職が容易に見つからないことに不満を募らせ、そのはけ口として金持ちの子弟が通う世界外国語小学校の児童を襲ったものだった。黄一川は精神疾患の病歴を持っていたが、裁判では刑事責任能力ありと判定され、2019年5月23日に故意殺人罪で死刑判決を受けた(死刑は未執行か?)。
(C)2018年10月26日午前9時30分頃、重慶市巴南区にある同区教育委員会直属の幼稚園で、包丁を持って侵入した39歳の女が園児に切り付け、少なくとも14人の園児が負傷した。
同幼稚園は14クラスに分かれ、400人以上の園児が学んでいる。この日、園児たちが早朝の体操を終えて教室へ戻ったところで、赤色の服を着て包丁を振り回す悪魔と遭遇したのだった。負傷した園児たちの多くは頭部や頸部を切られ、辺り一面に血痕が点々と落ちていた。犯行を終えた女は逃亡を試みたが、保安係と教員で取り押さえて警官に引き渡した。被疑者が犯行に及んだ理由は定かではないが、メディアは彼女が犯行の最中に「政府は私に不公平だ」と大声を上げていたことと、左手の指4本が欠けていたことに注目した。
(D)2019年1月8日午前11時17分頃、北京市西城区の宣武師範学校附属第一小学校の右安校区で男がハンマーを手にして児童を次々と襲い、20人の児童が負傷した。男は駆け付けた警官によって取り押さえられたが、幸いにも負傷した児童たちに命の危険はなかった。
被疑者は同校へ派遣されている労働者で、日頃は修理作業を行っていたが、派遣契約が1月末で切れることに不満を感じ、その鬱憤を児童に向けたものと思われる。
(E) 2019年2月21日午前7時頃、江西省吉安市の吉安市第八中学校の門前で33歳の“郭”という姓の男が包丁と果物ナイフを所持して通行人を刺し、中学生を含む11人が負傷し、地面には血だまりが出来た。当時は中学生の登校時間であり、負傷者には多数の中学生が含まれていた。負傷者11人は医院へ搬送されて治療を受けたが、命の危険はないという。なお、男は警察官と周辺の人々の協力して制圧されたが、彼は地元の住人で精神病の病歴があった。
(F) 2019年3月14日午後1時26分頃、河北省唐山市豊潤区にある光華道小学校の校門前で午後の授業を受けるため校門が開くのを待っていた児童たちに、酔っぱらった50歳前後の男が刃物で切り付け、17人の児童が負傷した。現場は血の海で、5年生の女子児童が最も重傷であり、多くの児童たちが首や顔面、耳たぶなどを切られていた。負傷した児童たちに命の危険はないという。男は現場で取り押さえられたが、それは地元の豊潤区に住む54歳の崔振江であった。彼の犯行動機が何であったのかは何も公表されていないが、地元の人々は社会に対する報復だと噂しているという。
 

日本でも登戸事件に関し、容疑者の岩崎隆一がどうして小学校の児童を標的にしたのかという議論がされているが、中国でも生徒・児童・園児を標的とした事件が起こる度に議論されている。その理由を十把一絡げで特定することは難しいだろう。

ただし、これらの事例を大局的な見地に立って分析すると、そこに共通するのは、被疑者に内在する不満のはけ口を力の弱い児童や園児に向け、刃物を所持して彼らを襲撃すれば、反撃を受けることなく殺傷という目的が達成できるという卑怯者の論理が見えてくる。