G20農業大臣会合で無人トラクターとロボットアームに世界が注目

「下町ロケット」も仰天の技術を披露!
松崎 隆司 プロフィール

ロボットアームを使った実験もスタート

つまり、日本は世界の“農業課題の先進国”といってもいい立場なのである。

「日本はアジア地域で水田を抱える国の中で最初に発展してきたので、経済発展の中で人口の減少や高齢化などどういう課題に対処するのか、ということがモデルケースにされるところがあり、日本での取り組みは世界での取り組みのひとつの鍵になり、そのまま世界につながっているのです。そのためにロボット技術や情報通信技術を活用したスマート農業への取り組みというのが、非常に大きいと考えられているのです」(農水省幹部)

 

最新型無人走行トラクター「TJV655R」のデモンストレーションに先立ちG20農業大臣会合初日の目玉となったのは、「ロボットアーム」。慶應義塾大学理工学部システムデザイン工学科専任講師の野崎貴裕氏が研究開発を進めている「触覚伝送技術(リアルハプティクス)」を使った「ロボットアーム」だった。世界初の技術で、どんなに柔らかい果物でもひとのようにやさしくつかみ、持ち上げることができるという。

G20農業大臣会合の会場でも野崎氏はプレゼンテーションやデモンストレーションを行い、今にもつぶれそうなたっぷりとクリームの入ったロールケーキやイチゴをロボットアームで持ち上げて見せた。

ロボットアームのデモ風景

「人の五感のうち、『見る(画像情報)』『聞く(音声情報)』はすでに実用化されています。『触覚』以外の4つの感覚はみな受動的。『触覚』は唯一能動的な感覚であり、人間が唯一外を変えることのできる感覚であり、感覚技術最後のブルーオーシャンなのです」(野崎氏)

ロボットアーム技術は切削のための位置の制御から発展してきているが、位置の制御だけでは「人間の代わり」にはなれない。物を触ったり手にしたりしたときの手応えとしての感覚、物から受ける応力により、硬さや軟らかさ、弾力性、動きなどを把握する感覚を「力触覚」と呼ぶが、これが既存の電動人工物にはほとんどないからだ。

こうした技術を開発したのが、慶應義塾大学理工学部システムデザイン工学科の大西公平教授だった。

「力触覚を伝えるためには、人が手で触るような柔らかい制御と、それによって実現される力の伝達が必要なのですが、現在のロボットはドリルを使った切削技術から発展してきました。そのため硬い物体に当たっても微動だにしない硬さを従来は重視していました。この『かたい制御』『やわらかい制御』など矛盾する原理であるため、これを実現するのはそう簡単なことではないのです。そしてこの原理を考え出したのが恩師の大西教授でした」(野崎氏)

その後、野崎氏が実用化に成功した。手にハンディキャップを負っている人などが足の指の感覚を使ってロボットアームを義手として使うこともできるという。

さらに人間の感覚をAIなどで解析し、人間に近い動作をすることもできるという。
こうした技術はすでに農業の現場でも実証実験が進んでいる。

渋谷精機がこの技術を使ってロボットアーム「RHIロボット選別システム」を開発、長崎JAで実証実験を行っている。

「これまで多くの人手を使いながら傷んだミカンの間引きをしてきましたが、こうした作業をこの技術を活用すれば、人手不足解消につながると思います」(野崎氏)