丸山ゴンザレス「アジアを席巻する格闘技イベント」に潜入!

「ONE Championship」観戦記
丸山 ゴンザレス プロフィール

ONEが作り出す新しい「ヒーロー」の形

なにせ彼らは日本に依存するところが一切ないのだ。世界各国の企業や投資家から少なくとも2億5000万ドル(275億円)の資金調達に成功しているという。

これもウォール街で成功をつかんだチャトリ・シットヨートン会長の手腕だろう。彼はハーフ・ジャパニーズである。タイ人の父と日本人の母に育てられた。

彼自身も語っていたが、日本への敬意は確実にある。むしろ、彼がいなかったら日本大会自体がパスされていたかもしれない。そんなチャトリさんのスピーチの内容は、私にとって新鮮な衝撃だった。

「それぞれの国にヒーローを作ったら、そのヒーローから勇気をもらえる。もっと夢を持つことができるようになる」

ほとんどの格闘技ファン、下手をしたら運営側にすらこの発想はなかったのではないだろうか。

私なりの解釈も入るが、ここでチャトリ氏のいう「ヒーロー」を定義したい。国ごとの代表であり、格闘技の実績はもちろんだが、人生に共感したり応援したくなる部分がある。そして人格的にも尊敬できる。そんな選手のことである。

 

これまで格闘技界に「ヒーロー」はいたが、それはタイトルを獲った人気のあるトップ選手の呼称だったり、選手本人の活躍によって人気が高まるといった、自然発生的な要因に頼ってきたように思う。それをONEはアジア各国ごとに作り出そうとしているのだ。いや、すでに作り上げている。

3月31日、日本大会の会場となった国技館には、日本人客だけでなく東南アジアや諸外国の人たちも詰めかけていた。

ある試合になって、会場のいたるところに国旗が並んだ。見覚えのある旗だ。ミャンマーである。彼の国を旅したことがあるのですぐにわかった。

会場内にミャンマー国旗を掲げる人が多かった

ミドル級&ライトヘビー級世界王者のアウンラ・ンサンが入場する、歓声はひときわ大きくなった。彼こそがONEが作ったミャンマーの「ヒーロー」である。

彼のファンは、おそらく日本国内で居を構えているミャンマー人がほとんどだろう。試合中、大きな声で「アウンラ!」と叫ぶ人たちが、この試合のために集まってきたのだ。これだけでもヒーローがもたらす影響がわかる。