日本が人工妊娠中絶の「後進国」であるという悲しい事実

Session-22✖️現代ビジネス
現代ビジネスとTBSラジオ『荻上チキ・Session-22』のコラボ企画、今回は、今年3月25日に放送され反響を呼んだ「日本の人工妊娠中絶」についての回を編集して、前後編でお届けします。

1948年に制定された旧優生保護法により、人工妊娠中絶が他国に先駆けて事実上合法化された日本。しかし中絶の方法そのものはこの70年でほぼ変わっておらず、WHOが推奨している安全な中絶薬は認可されていない。

WHOは2012年に、「Safe Abortion(安全な中絶)」と題したガイドラインを刊行。日本で一般的に行われている中絶方法である掻爬術についてのリスクを指摘し、薬剤による中絶や、真空吸引法に切り替えるべきであるとしている。

しかし経口中絶薬は日本では認可されておらず、手動真空吸引法についても海外に比べてコストが高いこともあって、普及しているとは言い難い。

『荻上チキSession-22』3月25日の放送では、日本での中絶の知られざる実態について、産婦人科医の遠見才希子氏とNPO法人「ピルコン」代表の染矢明日香氏をゲストに招き、話を聞いた。

 

日本の中絶は「Unsafe(安全でない)」?

南部 今夜のゲストをご紹介しましょう。産婦人科医の遠見才希子さんです。

遠見 よろしくお願いします。

チキ よろしくお願いします。遠見さんは、日本の中絶の現状を調査し、それを国際会議で発表なさってきたばかりとのことですが、それはどういった会議で、どういった発表を?

遠見 タイで行われた、Women's health(女性の健康)とUnsafe Abortion(安全でない妊娠中絶)に関する国際学会です。日本では現状、WHO(世界保健機関)が推奨している「薬剤による中絶」が認可されていないということで、日本での中絶は「Unsafe」、つまり「安全でない」というカテゴリーとして扱われていました。

この学会には、中絶が法律や宗教上の戒律でまったく認められていない国であったり、日本と同じく「Unsafe」にカテゴライズされている国の方たちも集まってくれば、逆にSafe Abortion(安全な中絶)カテゴリーの国の方たちも集まってきます。

今回私は、他のUnsafeカテゴリーの国の方たちと話をして驚かされることがありました。というのは、彼らの国では竹の細長い棒を何本も妊婦さんの膣の中に入れたり、お腹に強い力を当てて中絶を試みるとか、高いところから飛び降りさせるとか、もう信じられないほどに危ない中絶がされているそうなんですね。

チキ そういったレポートをした国があったのですね?

遠見 ええ。それと比べると、同じUnsafeとはいえ日本の状況はまったく異なっていますし、ある意味ではとても異質なんだなと感じました。今回の学会はSafe Abortionの実現に向けて、各国がともに考えていこうという趣旨で行われたものだったのですけど、実のところUnsafeにも本当にいろいろな状況があることを実感したんです。

チキ 日本は医療の技術面では先進国のはずなのに、中絶に関しては、さまざまなインフラが整っていなかったりする国と同列に「安全でない」ということになってしまう。そこに他の国とは異なる面がある、ということですね。より具体的には、どんな異質さがあるとお感じになりましたか?

遠見 この学会で私は日本の大学生の意識調査を発表したのですが、「中絶は悪だと思うか?」という設問に対して「そう思う」「ややそう思う」と答えた一般大学生が約44%もいたんですね。この数値を見た海外の方からは、「なぜこんなに高いんだ?」と驚かれました。

つまり「日本では中絶は合法で、正当な権利のはずじゃないか?」と。「権利であり、実施が認められていることを、なぜこうも罪悪視しているんだ?」というわけです。

チキ つまり、技術も権利も確立されているにもかかわらず、罪悪感や、あるいは社会的烙印がものすごく大きく働いてしまう。さらには本来なら採用されていいはずの、医療上よりセーフティーな手段もなぜかとられない。それはなぜなのか、という疑問をもたれたということですね?

遠見 はい。

チキ そのあたりについても、のちほど、解きほぐしていきたいと思います。