「イッテQ」ヤラセ疑惑の議論は進展せず…見え隠れするBPOの限界

政府も再構築を画策中…?
高堀 冬彦 プロフィール

まるで神学論争

答えを書く前に、放送法4条を確認しよう。①公安および善良な風俗を害さないこと②政治的に公平であること③報道は事実を曲げないでする④意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすることーー。

中学生でも分かりそうな内容だが、これが難しいのである。解釈が二分されているからだ。

総務省や自民党は放送法4条を「法規範(法律上の義務が生じるルール)」と考えている。だから、違反した場合は当たり前のように行政指導を行う。ところが、BPOや放送界は4条を「倫理規範(単なる努力目標)」に過ぎないと解釈しているのである。このため、指導が行われるたび、BPOは反発するのである。

 

BPOや放送界側は、放送法より憲法第21条の「表現の自由」が優先されるとも主張する。さらに、「権力の監視役」でもある放送界が総務省に監視されるのはおかしいという考えも持っている。

「法規範」か「倫理規範」か。どちらの解釈が正しいのだろう。このままでは神学論争なので、自民党内には「BPOか放送界に裁判を起こしてもらい、司法に判断してもらうのが一番いい」という意見もあった。それも一理あるだろう。このままではBPO、放送界と自民党の間で衝突が繰り返されるに違いない。

とはいえ、申し訳ないのだが、少なくとも放送界が政府や自民党を相手に裁判をやったり、本気で戦ったりするとは思えない。

なぜなら、「権力の監視役」であるにもかかわらず、放送局の経営者はこぞって官邸詣を欠かさないからだ。いずれの放送局トップも安倍晋三首相(64)と近しい。リベラルと目される放送局の経営者もそう。安倍首相と仲良くゴルフに興じる経営者もいる。

経営者に留まらない。ベテラン政治記者は安倍首相との食事会に集結する。これが権力の監視役たちのすることだろうか? 欧米ならスキャンダルになったり、報道の信憑性が疑われたりしかねない。

これでは、ジャーナリズムのあるべき姿を説き、政権や自民党と対峙し続けているBPOは、ハシゴを外された形だ。

2016年、国連の「言論の自由・表現の自由に関する特別報告者」を務めるデビッド・ケイ氏という人物が来日した。そして言論と表現の自由について調査を行い、日本のメディアの問題点を指摘した。その問題点の一つも「政府高官とメディア経営者の接近」だった。

また、ケイ氏は「政府から独立した放送界の監督組織の設置を」との提言も行った。それがない先進国は日本くらいなのである。

実は、民主党政権時代に当時の総務相・原口一博氏(59)がそれを作ろうとした。だが、民放連の反対などもあって、結局は実現しなかった。

原口案では、総務省が行っている通信・放送行政のうち、放送局の監督は新組織に移すはずだった。BPOの役割は新組織に移管するはずだったのだ。

幻で終わった日本版FCC。不思議なのは、総務省の行政指導を嫌がる放送界が、独立した監督組織の設立にもまた反対だったことである。

グローバルスタンダードに逆行している。「自分たちでつくったBPO以外からの口出しは許さない」ということなのか……。