「イッテQ」ヤラセ疑惑の議論は進展せず…見え隠れするBPOの限界

政府も再構築を画策中…?

BPOとはそもそもなんなのか…

「世界の果てまでイッテQ!」(日本テレビ)と「ポツンと一軒家」(テレビ朝日系)の熾烈な視聴率争いが世間の耳目を集めている。ところで「イッテQ!」のヤラセ疑惑はどうなったのだろう?

週刊文春が「イッテQ!」のヤラセ疑惑を報じたのは2018年11月8日発売号。それを受け、BPO(放送倫理・番組向上機構)の放送倫理検証委員会が審議入りしたのは2019年1月。だが、いまだに結論は出てていない。

「遅い」と感じる人も少なくないだろう。文春が疑惑を報じたのは秋だったが、もう初夏だ。

半面、やむを得ない面もある。BPOは行政組織ではなく、任意団体に過ぎない。裁判所や公正取引委員会などとはまるで違う性格の団体なのだ。

番組のジャッジなどを行う委員たちは外部の有識者たち。ほかに本業があるので、原則的に月に一度しか集まれない。だから、「イッテQ!」の中身を問う審議も一気には進められないのである。

行政組織ではないBPOの運営費をどこが負担しているのかというと、NHKと民放連、民放各社だ。つくったのも同じく放送界。BPOは、放送界が倫理上などの問題を自主的に解決するために設立した組織なのである。

誕生したのは2003年だった。旗振り役は政界にも強い影響力があった故氏家齋一郞・日テレ会長(2011年没)である。設立目的の一つは、諸問題を自分たちで解決することによって、政治家の放送への過度な介入を防ぐことだった。

放送界は運営費を出すものの、委員たちの発言は自由。番組へのジャッジなどに放送界が意見を挟まないことになっている。だからBPOは第三者機関と称される。

それでも自民党内には「BPOは放送界のお手盛り組織」「対応が甘い」といった批判が渦巻き続けている。最近は「BPOは再構築すべき」という声も高まっている。再構築の際には、政治によるBPOへの介入を可能にする仕組みにしようという強硬意見すらある。

 

そんな仕組みにするのはさすがに無理だろうが、2018年から放送制度改革に着手している安倍政権が、BPO再構築に強い意欲を持っているのは確か。遠からず「BPO対自民党」という戦いの幕が開きそうだ。

もともとBPOと自民党は長く冷戦状態にある。それは、NHK「クローズアップ現代/“出家詐欺”~狙われる宗教法人~」の過剰演出問題をBPO放送倫理検証委員会が調査した際にも露わになった。

2015年11月、同委員会は記者会見を行い、「重大な放送倫理違反があった」とする極めて厳しい意見書を発表した。これにとどまらず、NHKに「厳重注意」の行政指導を行った総務省の高市早苗大臣(当時)と、同局に事情聴取を行った自民党に対し、「政府が個別番組の内容に介入することは許されない」「圧力そのもの」などと厳しく非難したのである。

この発言は自民党を刺激した。確かに同党が事情聴取する法的正当性はなく、明らかに行きすぎだったが、総務省は放送界の監督官庁なのである。しかも放送界は免許事業。にもかかわらず、BPOが行政指導に異議を唱えたので、反発した。

総務相はたびたび放送局に行政指導を行っているが、そのつどBPOは反発する。2007年、「発掘!あるある大辞典Ⅱ」(関西テレビ=フジテレビ系)に行政指導が行われたときもそうだ。

放送内容にいくつもの虚偽があった同番組に対し、当時の総務相で現官房長官の菅義偉氏(70)は「警告」を与えた。また、同局が再び不祥事を起こした場合、停波もあり得るとした。

これに対しBPOの委員たちは、次のような抗議声明を発表したのである。

「本来、民主主義社会の根幹をなす言論・表現・報道の自由の重要性に鑑みれば、慎重の上にも慎重を期すべき事柄であり、行政の役割は、直接に指示したり、懲罰的な行政指導を行なうことではないと考える」(一部抜粋)

総務相は、放送法4条に違反する行為があると、行政指導を行うのだが、そのたびにBPOは抗議する。どうしてだろう?