# 米国

トランプ来日で「日本が本当に得たもの」とは何だったのか

成果と効果を検証する

「令和」になって最初の国賓として、米国のトランプ大統領が先週火曜日(5月27日)までの3泊4日の日程で来日した。

米大統領が4日間も日本に滞在したのは、2008年7月に北海道洞爺湖サミットに出席するため来日したジョ―ジ・ブッシュ大統領以来、実に11年ぶりのことだ。

トランプ大統領は日本滞在中、実に様々な話題を振りまいた。警視庁は神奈川、千葉両県警の協力を得て、最大で2万5000人の警察官を動員、24時間態勢で警備にあたった。これは、米大統領の来日時の警護として過去最大の規模だ。

一方、政府は、安倍晋三総理が日本を代表するプロゴルファーの青木功氏を呼び、トランプ大統領が大好きなゴルフで接待したり、大相撲の千秋楽を観戦して大統領自ら優勝力士に新設した米大統領杯を手渡したり、炉端焼きディナーをとったりと、至れり尽くせりのおもてなしに努めた。国賓としての来日なので、天皇陛下が大統領夫妻のために宮中晩さん会を開く一幕もあった。

期間中、警備に伴う交通規制や渋滞に困って苛立っていないか、複数のタクシー運転手さんに訊ねたところ、彼らがトランプ大統領に意外に好意的なことに筆者は驚かされた。とはいえ、異例尽くめの厚遇にはどんな効果があったのだろうか。日米のどちらにより実りが多かったのか。今日は、そうした総括をしておきたい。

 

「8月発表」発言の真意

まず、現在、日米2国間の最大の懸案で、その行方に我々も無縁ではいられない貿易交渉はどうだったか。

新聞・テレビは、米大統領の来日3日目に行われた日米首脳会談の冒頭で、いきなりトランプ氏が「たぶん8月には我々は何かを発表できるのではないかと思う」と発言して、日本側がずい分慌てたという報道を繰り返した。

こうした報道に拍車をかけたのは、茂木経済再生大臣が翌日の記者会見で「できるだけ迅速に協議を進めたいという期待感を述べたものだ」と解説したことだ。茂木大臣は新聞・テレビに信用がないので、報道陣が悪乗りしたのだろう。「政府が(米大統領の)8月妥結(要求)の打ち消しに躍起になっている」と皮肉った。

伏線になったのは、茂木大臣が去年秋、日米両政府が貿易交渉の開始で一致した際の合意文書に「サービスやその他早期妥結できる分野と同様に物品に関する貿易協定交渉」だと記してあることにほっかむりして、合意したのは対象が物品だけの貿易協定交渉で、英語の略称をTAG交渉(物品貿易協定)という趣旨のことを言い張ったことである。言わば「騙された過去」があるので、茂木大臣の主張の反対を報じておこうとの心理がマスコミの多くに働いたようだ。

しかし、トランプ大統領は選挙重視の政治家である。外交も内政もすでに来年の自身の大統領再選に備えるモードになっている。そんなトランプ氏が、世界を見渡した時、数少ない味方の安倍さんの命運を左右する参議院選挙が7月にあることに配慮しないわけがない。そこで、大統領発言は「貿易交渉は8月から」と、安倍総理に参院選に専念する猶予を与えたというのが本当のところだろう。

実際のところ、あの発言の英語の原文は、「I think we will be announcing some things, probably in August.」だ。ちゃんと聞けば、「some things(何かいくつか)」を「will be announcing(発表できるだろう)」としたのが、「probably(多分)」、「in August(8月)」と言っているに過ぎない。

トランプ氏の心情は、「安倍総理、しっかり選挙を戦ってくれ、そして8月からの2国間交渉で、大統領選の援護射撃、つまり日本が大幅譲歩しやすい盤石な基盤を築いてくれ」というような激励の意味が込められていた、と理解すればよいのではないだろうか。

まして、両政府・両首脳が裏で何らかの合意をするような密約があったとはかんがえづらい。そもそもトランプ大統領は連日、ツイッターでメッセージを発していることからもわかる通り、物凄い目立ちたがり屋さんだ。何か合意があれば、すぐツイッターに書き込んで、自身が大きな成果を挙げたと自慢するはずである。それがないのは、何も決まっておらず、密約も存在しないことの何よりの証拠だとみられる。

ただし、8月までの猶予を与えたこととは、8月からの日米交渉が楽なものになるということではない。次々と制裁関税の対象を拡大するというトランプ大統領の強硬な交渉手法は、習近平・中国のプライドをズタズタに切り裂き、猛反発を招く結果になった。米中間の貿易戦争はエスカレートするばかりである。

 
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