川崎事件「犯人は在日」悪質デマに日本籍の在日コリアンが思うこと

そして、私が父とLINEをする理由
金村 詩恩 プロフィール

父が法律をどこまで知っていたかは分からない。しかし、過去の経験からどうするべきかを彼なりに考え、家族を守ろうとしていたのである。

あの会話をしてからというもの、居場所や行き来する日時までこと細かく伝えるようになった。なにもしないよりかは心配してくれている身内に情報を伝えた方が法律より役に立つかもしれない。

法律や社会の枠外に置かれたのであれば自らが気をつけるしかない。こんなことはいい加減やりたくないのだが……。

〔PHOTO〕iSock

「もう帰るね」と送ると「きょうの夕飯はハマチの刺身とキムチ炒め!気をつけて帰ってきてね」と顔文字付きで返信がすぐに来た。

「○○で起きた事件の犯人は在日」というデマが流れるかぎり、父とのやりとりはつづいていくだろう。こうやってわたしの日常にもヘイトの波は静かに、それも確実にやってきている。

返事が来たのでペダルをこぎはじめながら「このさき、いったいどうなってしまうのだろう」と不安になっていると、真っ暗な空から水滴がぽつぽつと頬を打った。夜の霧に包まれる前に雨に打たれた。

「はぁ」とため息をつきながら全速力で走る。

このため息は雨に対してだけではない。