川崎事件「犯人は在日」悪質デマに日本籍の在日コリアンが思うこと

そして、私が父とLINEをする理由
金村 詩恩 プロフィール

なにも変わってない

あるとき、私は新潟へ遊びに行ってくると告げた。

年に3回は行っている場所だし、泊るところも以前伝えたことがあったのでしつこく言われないと思っていたが、父は「行く時間と泊まる場所、帰る日時をあとでいいからLINEしてね」と言った。

さすがに我慢できなくなり、「あのさ、もう27だよ。子どもじゃないし、いちいち連絡するのとかもう止めにしない?」と提案した。

すると父はこう言った。

「ネットで大きな事件があったとき、『あれは在日が起こした』ってどっかのだれかが書くようになっただろ? そんなウソを真に受けたバカが『韓国人とか朝鮮人は犯罪者だから出て行け』って平気で言うようになった。

お前も本を出したり、記事を書いたりして名前が出るようになったからそんな連中に狙われるかもしれない。万が一、なにかあったら居場所を手掛かりに探せるだろ」

 

彼は単なる心配性ではなかった。

「もう孫もいるんだし、なにかあったら警察に頼めばいいよ」と気遣ったつもりで言うと、すかさず父はこう返した。

「あいつらが在日を守るって本気で思っているのか? お前の伯父さんなんか高校生だったとき、韓国学校の校章を制服につけていたもんだから駅で毎日のように喧嘩を挑まれてたわな。

警察に行っても『子どもの喧嘩』って言って相手にしてくれないんだ。だから伯父さんは身を守るためにボクシングジムに通いはじめたんだよ。

お袋は『どうしてそんなことやるんだい。殴られすぎて頭やられて働けなくなっても知らないよ』って嘆いていたけれど心配をかけまいと訳も言わずジムに通ってたよ」

話を聴いて「なにも変わってないじゃん」という感想以外出てこなかった。

現在、日本にはヘイトスピーチ対策法が存在するが法律自体が理念法であるせいなのか抜群の効果を持っているものであるとは言いにくい。

在日コリアンが集住している地域ではヘイトスピーチを規制するための条例が作られているものの、、そうでない地域では対策を講じる以前に「ヘイトスピーチ」がいったいどういうものなのか理解されておらず、問題として認識されていない。

集住地域に住まない在日たちにとって法律は身を守るための大切な武器になるのだが、さらにヘイトスピーチ解消法で保護する対象とされているのは「本邦外出身者」であるとされている韓国籍や朝鮮籍のひとびとであり、わたしのような日本国籍を取得したひとびとはそこに含まれていない。