「義務」が大嫌いな私が「男性育休義務化」にそれでも賛成する理由

制度は手厚いのに、取得する人がいない
治部 れんげ プロフィール

アジアの中でも制度が手厚い日本

こうした日本の男性が置かれた状況を、海外の調査機関が的確に分析している。

3月末に発表されたオランダのアムステルダムに本社を置くエクイリープ社による調査「Gender Equality in Japan, Hong Kong & Singapore: Assessing 100 leading companies on workplace equality(日本、香港、シンガポールのジェンダー平等:100社の職場における平等を測る)」によれば、親に対して有給の育児休業を保障する長さに関して、日本は法律面では最も手厚い国のひとつであるという。それにもかかわらず、日本の男性はこの制度を充分に使っていないこと、ワークライフバランスの問題として「男性の育休取得者がいるかどうか」が議論になっている。

エクイリープ社の調査によれば、日本企業は働く女性は多いにもかかわらず、管理職や役員が非常に少ない。欧米はもちろん、香港、シンガポールといったアジアの主要都市の大企業と比較しても、上級管理職の女性比率がわずか16.1%(香港31.1%、シンガポール33.7%)、取締役12.3%(香港15.3%、シンガポール17.5%)と女性の活躍が進んでいない。

 

毎年秋に発表される世界経済フォーラムのジェンダーギャップ指数で、日本は年々順位を下げている。政府が女性活躍政策を進めているのに順位が下がっているのは、長時間労働が評価されやすい企業文化が原因で、諸外国に比べて男性の家庭参加度合いが著しく低いためである。先進国では女性は男性の2倍の時間、家事や育児をしている。日本はこれが4倍、5倍と大きいのである。どの国にも家庭内にジェンダーギャップがあるが、日本はギャップが「大きすぎる」のが問題だ。

企業が他の企業の育児支援に「タダ乗り」する現状

そのために、企業間の競争が不公平になっている。やや単純化していえば、同程度の難しさの仕事をしている男女でも、結婚出産後は女性の家庭責任が重くなる。妻は産休育休を取り、時短勤務で復帰する。職場にある育児支援制度をフルに使ってワンオペ育児を担う。夫が家庭でほとんど何もしない場合、夫を雇用している企業は、妻を雇用している企業の育児支援にただ乗りしている構図になる

無償ケア労働を男性がもっと担えるようにしない限り、どれだけ手厚い育児支援制度を設けても、女性の活躍は進まない。

〔PHOTO〕iStock

先日、電機系企業の労使懇談会で「女性活躍推進と働き方」について講演をした。参加者に自由意見を述べてもらったところ、同じような話が出た。

ある企業では「とにかく、男性の育休取得者を出したい。制度があります、と言うだけではだめなので、この人は取ってくれるのでは、と思う人を見つけて声をかけるようにしている」という。講演会の出席者は1人を除いて全員男性であったが、多くの人から「男性の働き方改革」の必要性、長時間労働の是正が必要という意見が出ていた。興味深いのは労働組合の役員も経営側の管理職も意見が一致していたことである。

遅々として進まないジェンダーギャップを解消するためには、男性の家庭参加を急いで進める必要がある。そのためには、男性育休取得率を数年後に十数%増というような小さなことを言っても変わらない。再来年から100%、代替要員など必要な財源も政府が負担します、くらいのことを言って初めて社会は大きく変わり得る。