「義務」が大嫌いな私が「男性育休義務化」にそれでも賛成する理由

制度は手厚いのに、取得する人がいない
治部 れんげ プロフィール

そんなことを考えていた折、Googleで働いている友人から「10%増ではなく10倍に増やすことを求められる」という話を聞いた。革新的な技術やサービスで知られる同社の組織文化を端的に伝える考え方である。10%増だと現状の延長で物事を考えるが、10倍増だと本当に新しい発想が必要となり、今までと違う人が活かされる、と聞いて納得した。

まずは、「10%増」を目指す今の世界を見ておこう。

 

「制度」があるだけでは足りない

そこでは、ワークライフバランスを取れる人と取れない人に分かれている。たまたま良い職場に恵まれたり、抑圧的な空気に負けないメンタリティを持っていれば男性でも育休を取ったり子どものお迎えに間に合う時間に帰れるが、大半はそうではない。

我が家は共働きで小学生の子ども2人を育てている。夫が子ども好きであり、家事を当然のようにやり、職住近接で労働時間が柔軟であるため、世の中の多くの女性と比べれば、私にとって両立は楽な方だったと思う。友人の中には、自分より夫の方が育児上手という人や、海外出張の時、夫がベビーシッターを兼ねて同行してくれた、という人もいる。経験から言って、子どもが乳児の頃は夫婦で育児を分担できても、負担は重い。そして、目を外に向ければ、全く違う世界が広がっている。

〔PHOTO〕iStock

ある週末、子ども同士を遊ばせながら話をした働く母親は、夫の職場環境について悩んでいた。夫の上司が育児に無理解だという。「夫はそれでも、僕はこの時刻には必ず帰る、と言っていますが、心理的なプレッシャーが大きい」と。別の日に仕事で講演に赴いた先では、ダイバーシティをテーマに話して欲しい、と依頼してくれた組織の担当者が控室で「僕も育休を取りたかったのですが取れなくて。妻は同じ職種でしたが、育児で退職しました」と打ち明けてくれた。

ここに記した職場では、育児休業の制度は整備されており、管理職に聞くと「休みは取れています」と言い切る。管理職には育児世代の部下の本音は伝わっていない。分かってくれそうもない上司に、あえて育休を切り出す勇気を持てる男性は、そう多くない。