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「我々は月に行く」マスコミが黙殺した、訪日トランプ重大発言の意味

中国の「宇宙覇権」戦略を食い止める

中国への強いメッセージ

吹き荒れた「トランプ旋風」も太平洋の彼方に去り、初夏の強い日差し到来と共に東京およびその周辺は平穏な日常に戻った――。

令和初の国賓として来日したドナルド・トランプ大統領とメラニア夫人の日本公式訪問の目的はいったい何だったのか。

まず指摘しておくべきは、5月27日に東京・元赤坂の迎賓館で行われた安倍晋三首相とトランプ大統領の共同記者会見で、トランプ大統領が語った重大な発言を、日本のメディアがまったくと言っていいほど無視したことである。

少々長くなるが、同大統領の発言を再現する。

「安倍首相と私が今日、有人宇宙探査における両国の協力を劇的に拡大することに同意したことをうれしく思う。日本は、米国の宇宙飛行士を宇宙空間に送る我々の任務に加わる。我々は月に行く。その後すぐに火星に行く。それは非常に刺激的だ。軍事的見地からも今日、宇宙ほど重要なものはない」(「読売新聞」28日付朝刊に掲載された共同記者会見の要旨)

どの新聞を読んでも、このトランプ発言についての記事・解説は一切なかった。実は、前日の26日にホワイトハウス関係者は同行記者に次のように語っていた。

「明日の共同会見で、大統領が2024年に人類を再び月に着陸させる計画を日本と共同で推進する考えを明らかにする。これは日米の強固な関係を宇宙規模まで拡大するメッセージである。インパクトがあると思うよ。中国にとっても強いメッセージになる」

 

筆者は年初の本コラムで、中国の「ハイテク・宇宙覇権」戦略について言及した。特異の知見と経験を持つ中国専門家である遠藤誉氏が指摘した習近平国家主席主導の国家戦略「中国製造(Made in China)2025」(2015年5月発表)には、有人宇宙飛行や月面探査プロジェクトなどが盛り込まれている、と。

「宇宙強国・中国」の工程表によれば、3年後の2022年までに日米主導で打ち上げられた既存の国際宇宙ステーションの次世代型である独自宇宙ステーション「天宮3号」を打ち上げ、28年ごろまでに火星探査機を打ち上げて土壌サンプルを収集して地球に帰還させる計画があるのだ。

トランプ政権が現在、強権的に進めている通信機器最大手の華為技術(ファーウェイ)排除は中国の「ハイテク覇権」戦略を容認しないという強烈な意思表示であり、今回のトランプ発言は中国の「宇宙覇権」戦略に対する明確な挑戦宣言である。

しかも、それを日本と連携して推進するというのである。