東大卒・女性キャリア官僚の私が、霞が関を去った理由

この国の中枢で起きていること
奥村 まほ プロフィール

スーパーウーマンじゃなくても続けられる職場に

このように女性官僚を取り巻く状況には厳しいものがあります。今回挙げたもの以外にも、月経にまつわる問題など、過酷な環境への適応を難しくする女性特有の事情を抱えている職員は少なくないでしょう。男性ばかりの職場ではこうした悩みは相談しづらく、「相談しても心から理解してくれるはずがないし、弱いと思われて評価が下がるだけだ」と考えてひとりで苦しんでいる人もいると思います。

しかし大学時代まで男性と渡り合って成功を収めてきた女性の中には、私がそうであったように「自分になら何でも乗り越えられる」と思いこみ、仕事内容だけを見て就職先を選ぶ人も少なくありません。説明会で相手がスーパーウーマンとは知らずに話を聞き、「私もきっと大丈夫」と考える学生もいるかもしれません。その中には、本当に「大丈夫」な未来のスーパーウーマンもいることでしょう。

 

でも、だからといって、すべての女性が同じようになれるわけではないのです。だれもが強いわけではないし、仕事へのモチベーションを高く保てるわけではない。強いだけではどうにもならない問題もあるし、人生における仕事の立ち位置だって価値観だって、刻一刻と変わっていく。

身も心も強靭でなければ、あるいは大きな犠牲を払ったり、手厚い支援を受けたりしなければ残れないような組織では、今後もロールモデルになりそうでならない女性が残っていくだけでしょう。

就職当初、男性職員に「きみたちが女性職員のロールモデルになればいいんだ」と言われたことがありますが、これほど無責任な言葉はないと感じます。環境を改善することなく、耐えて耐えて耐え忍んだ女性や恵まれた環境にある女性をロールモデルとして崇めても、女性職員へのプレッシャーがますます強まるだけです。

政府はやみくもに採用人数を増やすのではなく、採用した女性が安心して働き続けられる環境とは本来どのようなものなのか、本当のロールモデルを作るためには組織がどう変わるべきなのか、真剣に考えていく必要があるのではないでしょうか。

本来、国の政策を考えて実行していくのはやりがいがあり、面白い仕事のはずです。それが就職後、あらゆるマイナス面によってかき消されて見えてしまうのは、男女に関係なく本当にもったいないことだと感じています。

「日本をもっと良い国にしたい」
「利益にとらわれない仕事がしたい」

そんな強い思いを抱いて就職するすべての若者の熱意が生かされ、また自分自身の心と体も大切にしながら働ける組織に変わっていくことを強く願っています。