映画『小さな恋のうた』が熱い。『ちはやふる』シリーズでも注目された佐野勇斗森永悠希、チョコレートのCMでもおなじみ山田杏奈、千葉真一の息子の眞栄田郷敦、『3年A組-今から皆さんは、人質です』の鈴木仁ら出演者が実際に演奏するライブシーンも話題になっているが、なにより「リアルな今の沖縄」が描かれていると評判だ。

2018年11月30日には投票率63%を超えた沖縄県知事選があった。2019年1月には沖縄戦争直後のリアルを描いた真藤順丈氏の『宝島』が直木賞を受賞し、その後、辺野古埋め立て問題がニュースになった。そんな今「リアルな現代の沖縄」を描いたのは、沖縄出身ではないどころか、それまで一度も沖縄に足を踏み入れたことのなかった脚本家・平田研也さんだった。どうやって「リアルな沖縄」が生み出されたのか。ライターの梅津有希子さんが平田さんに話を聞いた。

「沖縄は癒しの観光地」

オスプレイや米軍基地がらみのデモなど、絶え間なく流れる沖縄のニュース。つい最近も「Yナンバーの車」の事故のことが報じられていた。だが、こういった沖縄のニュースは目にするものの、我々自身が旅行に行く際に求めているのは、「海の美しさ」や「ゆったりとした時間が流れる独特の空気感」「あたたかい南国での癒し」といったリゾート感で、絶え間なく流れるニュースには実感が伴わないという人も多いのではないだろうか。

「そうですね。僕もそういう印象しかありませんでした」

と語るのは、脚本家の平田研也さん。映画『小さな恋のうた』の脚本を担当し、さらに映画をベースにした小説も自ら手がけた。
この作品は、沖縄出身で、現在も地元を拠点に活動しているロックバンド「モンパチ」ことMONGOL800の楽曲からインスパイヤされた物語で、沖縄の小さな町で熱い人気を集める高校生バンドと、米軍基地に住む1人の少女との青春を描いた「青春音楽映画」だ。

フェンスを隔てた「2つの国」で同時代を生きる若者たち。ひとつの悲しい事故をきっかけとし、「普通の生活の中に基地がある沖縄」の日常が明確に浮かび上がってくる。

昨年、結成20周年を迎えたモンパチは、浦添高校の同級生だった上江洌清作(ボーカル・ベース)、儀間崇(ベース・ボーカル)、高里悟(ドラム・ボーカル)によるスリーピースバンドだ。

平田さんが取材にいったときの浦添高校軽音楽部の部室。モンパチはこの高校から始まった 写真提供/平田研也

高校在学中にインディーズでデビューし、2001年にリリースした2ndアルバム「MESSAGE」が、インディーズアルバム史上初のオリコン首位を獲得。280万枚の売り上げを記録したほか、同アルバムに収録されている『小さな恋のうた』は、平成で最も歌われたカラオケランキングの男性アーティストによる楽曲で1位を記録するなどモンパチを代表する曲。リリースから約20年経った今も、高校野球の応援などでも人気が高い。

物語もバンドをとりまくストーリーで、ある意味でモンパチともリンクしている。米軍基地など沖縄のリアルな情景も描かれているのだが、平田氏は脚本を書くまで一度も沖縄に行ったことがなかったという。そんな彼が、なぜこの映画に関わることになったのだろうか。

「モンパチの後輩」から始まった

「僕はROBOTという制作プロダクションに所属しているのですが、8年前のとある日、当時社員だった沖縄出身の山城竹識くんから突然『モンパチの曲をベースに、リアルな沖縄についての作品を作りたいので、脚本を書いてほしい』と頼まれたんです」

モンパチの高校時代の後輩でもある山城氏は、同校の軽音楽部に所属していた彼らの音楽をリアルタイムで聞いていた。

「高校生が組むバンドは、誰かのコピーを演奏することがほとんど。モンパチは珍しくオリジナルで勝負しているバンドで、体育館で初めて曲を披露した時、あまりの驚きで聴いていた生徒たちはみんなポカンとしていたそうです。山城くんもすぐに彼らのファンになり、それからずっと可愛がってもらっているのだそうです」