アップルがGoogleとFacebookを名指しで批判した理由

最新イベントで見えた「次の戦略」
西田 宗千佳 プロフィール

人がCGの中に!? ARの未来に賭けるアップル

そして最後が、「未来への投資」だ。

アップルは2017年に公開した「iOS11」で、iPhone・iPadに「AR(拡張現実)」の機能を搭載した。以来、アップデートが続き、今年の「iOS13/iPadOS13」では、「ARKit3」が登場する。

ARKit3ではARのクオリティ全般に改良が加えられているが、最も大きな変化は「People Occlusion」とよばれる機能だ。オクルージョンとは「隠蔽」という意味で、「人を隠蔽する」「人で隠蔽する」という機能なのだが、言葉で説明するより写真で見たほうがわかりやすい。

次の写真は、WWDCの基調講演で行われたデモのひとコマだ。

【写真】ARKit3に搭載された「People Occlusion」
  ARKit3に搭載された「People Occlusion」。人がCGの奥にいて「CGに隠れている」ところに注目

CGと人が自然に同居している、なんということのない映像に見えるだろう。

ポイントは、CGで描かれた物体の「後ろに人がいる」ことだ。現実の世界にいるのは、人だけだ。こういう映像を描くには、

  • CGと人の相対的な位置関係を把握する
  • 人よりも前に描くべきCGで、必要な部分だけ、人の映像を「隠す」

という2つの処理が必要になる。

ARが自然なものになるための必須の要素だが、技術的なハードルは高い。特に、専用の距離センサーを搭載していないiPhoneのような汎用機器で実現するのは大変だ。今回の機能は、それをうまくクリアしている。

「将来誕生する機器」のために

次の写真は、Mojang(マイクロソフトの子会社)が開発中の「マインクラフト・アース」のものだ。

マインクラフトは子どもたちにも人気のヒットゲームだが、そのAR版だ。画面中央に人がいて、その周囲はすべてCGで描かれている。そして、人の手前にもCGが重なっている。

「人がCGのどこに配置されるべきか」が、きちんと判断されているのだ。だから、人がマインクラフトの世界に入り込んでしまったり、現実世界の中にマインクラフトのオブジェクトを置いたりしながら、ゲームを楽しめるわけだ。

【写真】マイクロソフトが年内に提供開始予定のスマホARゲーム「マインクラフト・アース」
  マイクロソフトが年内に提供開始予定のスマホARゲーム「マインクラフト・アース」。People Occlusionを活かし、CGの世界に人間が完全に入ってしまっているように見えている点が新しい

ARは、いまだ一部のゲームに使われているだけで、「生活に必須の機能」とはいえない。

しかし、アップルは積極的に機能拡充に取り組んでいる。それは、高性能なiPhoneを差別化して、買い換えてもらえる要素にしていくという側面もあるだろう。

だが、iPhoneだけでなく「将来あり得る機器」においても必要になるからだ……、ともささやかれている。どういうことか。

iPhoneやiPadを通して見るのでなく、メガネ型の、俗に「ARグラス」とよばれる機器でも、こうした技術は必須になる。将来的にはそういう機器の開発を目指しているから、アップルはARに積極的なのだ、とする「読み筋」があるのだ。

筆者も、複数の情報ソースから、アップルがARグラスを開発中であるのは間違いない、と考えている。現在のiPhone向けの技術がそこに直結しているかどうかは不明だが、少なくとも「従来のスマホではできないこと」をどんどん開拓していく姿勢は重要だ。

このような発表が行われるのもまた、「開発者会議」ならではの側面といえるだろう。アップルは確実に、自らの未来像を描き出す場として、WWDCを活用している。