アップルがGoogleとFacebookを名指しで批判した理由

最新イベントで見えた「次の戦略」
西田 宗千佳 プロフィール

GoogleやFacebookの「リスク」を指摘

アップルは以前から、独自の地図サービスを展開しており、積極的に建物や地形の立体構造を収集していることで知られている。

アメリカでは2019年中に、このデータを使った「新地図」が提供される。日本を含めた海外については詳しいアナウンスがされなかったが、「いくつかの国は来年中に」とだけコメントがあった。

この新しい地図では、建物などの立体構造描写がしっかりしており、Googleマップでいう「ストリートビュー」に似た「Look Around」という機能も搭載されている。

【写真】ストリートビューに似た「Look Around」
  ストリートビューに似た「Look Around」。大量のデータを取得しており、ストリートビューより風景がなめらかに変わるのが特徴だ

地図も重要だが、現在、さらに重視すべきは、地図を使うアプリやサービスが増えていることだ。結果的にそれらのアプリから、行動履歴などが収集される可能性があるからだ。アップルは、ライバルであるGoogleやFacebookの「ログイン」ボタンを示して、そうしたやり方が危険である、と主張する。

【写真】
  ライバルのログインボタンを示し、「プライバシー上のリスク」だと指摘するアップル

そこで、アップルは新たに「アップルを介してログイン(Sign in with Apple)」という機能を追加した。これは、各種アプリやサービスにiPhoneなどに使う「Face ID」を活用するというものだ。

Face IDは、ネットを介さずに端末内で認証が終わるため、プライバシーが外部に漏れにくいという特徴をもつ。メールアドレスなどが必要になる場合には、アップルが「自動でつくったランダムなメールアドレス」を提供する。

これなら、問題が起きても廃棄できるし、メールアドレスから他のサービスに関わるユーザーの情報をたどるのも難しい。要するに、「アップルはログインIDでユーザーの行動をトラックしないので、安心して使ってほしい」というアピールだ。

世界中のiPhoneがネットワーク化する!?

さらには、地図サービスを使った「Find My」という機能も提供する。

アップル製品にはすでに、盗まれたり置き忘れたりしたiPhoneなどの「最後の位置」を確認する「Find My iPhone」という機能が備わっている。だが、この種の機能は、ネットワークがオフにされると意味がない。

Macの次期OSとして発表された「macOS Catalina」には、新たな機能としてBluetoothを使った位置検索機能が搭載される。

数年前から「Bluetoothビーコン」とよばれる機器を持ち歩き、それら同士の位置関係から、持ち物の位置を特定するサービスは存在している。「Find My」は、そのアップル版だ。

だが、Bluetoothビーコンベースのサービスには、大きな欠点がある。それは、対応するBluetoothビーコンが世界中に普及していないと、検知できない地域が広がってしまうということだ。世界のどこでも信頼できるサービスを提供しているメジャーなBluetoothビーコンサービスは、まだ存在しない。

そこでアップルは、「誰もがもっている」機器をBluetoothビーコン代わりにすることにした。──iPhoneだ。

iPhoneから一瞬だけBluetoothビーコンを発し、近くにあるMacと通信することで位置を把握する。すでに世界中にiPhoneをもっている人がいるので、なくしたMacの発見が容易になるというわけだ。

【写真】ストリートビューに似た「Look Around」
  「Find My」では、周囲にあるiPhoneをBluetoothビーコン代わりに使い、自分のMacの所在を、たとえ通信がオフになっていたとしても見つけ出す

ただし、この機能には気になる点が3つある。──バッテリーと通信量とプライバシーだ。

バッテリー消費や通信量はごくわずかで、ほとんど無視できるほどだという。そして、プライバシーについても、ビーコンのIDや発見に必要な情報は完全に暗号化されており、他人に覗かれることもないし、アップルと探している本人以外は使わない。こうしたサービスが可能なのも、プライバシー重視の体制と自前の地図サービスがあってのことだ。