筆者提供

丸山ゴンザレス、完全武装でブラジルスラム街へ突入!

クレイジージャーニー裏日記⑭後編

【前編はこちら】

警察内部も一枚岩じゃない

「『エリートスクワット』は見ました?」

ブラジル取材でサポートをしてくれたK君から入国する前に見ておくように言われた映画だった。ブラジルの特殊部隊員を主人公にした作品で、日本にもファンが多い。以前一緒に仕事をさせてもらったことがある映画ライターのギンティ小林さんも、大好きな作品だと評価していた。

それだけ優れた映画だということだが、ジャーナリストとしては、こうした資料的なものは下調べの意味も込めて、現場入りする前に見ておくことにしている。

どんなに心構えはどれだけ立派にしても、ブラジル出発前の私は日本での仕事がかなり詰まっており、取材スケジュールを捻出するだけでも精一杯。とてもではないが、映画を見ている余裕はなかった。

私が知る限り、映像作品を見ながら執筆できる人は京極夏彦先生ぐらいしかいない。京極先生の境地には遠く及ばない私が作品を見ることができたのは、結局、ブラジル入りした日の夜だった。

内容は確かに面白いし、設定にリアリティもあった。しかしそれ以上に強く思ったのは、翌日から同行するのがこういう人たちなのだという浮き立つ感覚だった。

単なる警察じゃない。存在するだけでギャングと殺し合う理由になる人達と一緒に動くのだ。わくわくするなというほうがおかしいだろう。

 

今回は、ブラジルの警察組織がギャングたちを駆逐する「オペレーション」に同行させてもらえる算段になっていた。ブラジル名物のステーキをしこたま食べてビールを飲んだ(このときは糖質制限していたのでライスは控えめ)。

時差ボケと疲れを癒すためにも寝ておくべきだったが、オペレーションが発生するかどうかは、当日の明け方に電話が鳴るかどうかで決まる。

「ここだけの話でいいから教えて」と詰めても、ジョルジたちですら、命令が出るまで、本当にいつオペレーションが発生するかわからないのだという。どこで情報が漏れるのかわからない警戒感の現れでもあるし、警察の中には犯罪組織とつながっているやつもいるということを示している。警察内部も一枚岩ではないことが伺えた。

というわけで、興奮と疲労を消化しきれないままにオペレーション取材はスタートしたのだった。

防弾チョッキに防弾車、さらに装甲車まで

リスクが高いことは事前にわかっていたので、こちらも野面で行ったわけではない。事前に防弾車を手配したし、警察を通じて防弾チョッキも用意した。

実は防弾チョッキを着るのは初めてだったのだが、思った以上に頼りないというのが正直な感想だった。ガードされているのは腹部だけ。脇腹や頭など一発で致命傷になりそうなところは覆われていないのだ。

どういう意図があるかわからないが、重体になって動けなくなることだけを避けようとしているようにしか思えなかった。戦略系RPGゲームで鬼畜軍師の立てる作戦じゃあるまいし、血まみれでのたうち回って出血多量で絶命なんて御免こうむりたいところだ。