「オフィスの本質」を徹底的に考える
世間ではこの4月から「働き方改革関連法」が施行されている。その影響もあって、リモートワークに対する注目が高まっているが、一方で多くの企業では限定的に試行する段階に止まっている、という話も聞こえてくる。リモートワークが働き方改革の「鬼門」になっているようなのだ。
筆者の経営する株式会社ソニックガーデンは2016年に本社オフィスを撤廃し、現在は全社員がリモートワーク(テレワーク)で働いている。社員数は40人だ。地方に住む社員が多く17都道府県に散らばっていて、オーストラリアや東南アジアを旅しながら働く社員もいる。
全員がリモートワークでも業務で不自由を感じることはない。そればかりか、オフィス廃止後は生産性が上がり、ありがたいことに業績も向上している。
そんな中で、なぜ私たちはリモートワークを実現できたのか。それは、「オフィス」というものの機能をよく考えたからではないか、と思っている。オフィスの本質的な機能を理解し、その機能をリモートワーク環境でも実現させることができるよう工夫した結果、リモートワークが成功していると考えられるのだ。
リモートワークにも必要だったのは「場」
では、オフィスの機能とは何だろうか。
普通の会社のオフィスを眺めてみよう。どの会社にも共通するのは、自分の仕事をする自席、集まって会議をする会議室、契約書など書類を保管する場所くらいだろう。
昔なら、壁に張り出された掲示板や、書類を送り合う社内便などがあったが、今は組織内のネットワークを用いたグループウェアで代替されているところがほとんどだろう。社内サーバもクラウド化すれば不要だ。こうした機能については、一般的な企業もリモートワークを導入する際にツールを用いてうまく代替しようと意識する。この点で失敗することは少ない。
しかし、極めて重要であるにもかかわらず、見逃されがちなオフィスの機能が存在している。それは「何気ないコミュニケーション」である。
物理的なオフィスには、同じ会社や同じチームの同僚がそこにいる。気軽にちょっとした相談をしたり、何気ない雑談をすることができる環境があるということだ。裏を返せば、いつでも気軽に声をかけ合うことは、同じ時間と空間にいないとできない。これがオフィスの重要な機能だ。私はこの気軽なコミュニケーションを、雑談+相談=「ザッソウ」と読んでいる。