〔PHOTO〕立木義浩
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発酵学の泰斗・小泉武夫教授が語るウイスキーと人間の熟成のはなし

タリスカー・ゴールデンアワー25回(前編)

提供:MHD

小泉武夫教授とわたしはむかしから気が合う仲である。教授には象牙の塔の厳めしさはまったくなく、寛容で気前がよく人間味たっぷりの魅力溢れる人物である。

はじめてお会いしたとき、開高健先生とわたしの共著『水の上を歩く』をいつも持ち歩き、読み込み、ボロボロになっていたのがとても印象的であった。だからいまから4年前にCCCメディアハウスから、『水の上を歩く』の蘇生版が上梓されたとき、迷わず小泉教授に本のオビを書いてもらった。すでに小泉教授の肩書きは、「文筆家 小泉武夫」となっていた。

そして文筆家の小泉先生は、こんな名文の惹句を書いてくれた。

「ユーモアとは何か、ジョークとは何かを知りたかったら、本書を読みなさい。そうするとこの本から湧き出てくる笑いの中から、自然に明るい心が開けます」

そう、いまや発酵学の泰斗は、稀代の小説家なのである。

昨年12月に新潮社から上梓された作家・小泉武夫の『骨まで愛して――粗屋五郎の築地物語』は、肉欲ではなく食欲を刺激する新ジャンルに挑戦した傑作小説である。

2019年の「小説新潮」3月号に掲載された小説家・小泉武夫の『食いしん坊ガキ大将』も面白かった。惹句にはこう書いてあった。

「干柿、鶏めし、油揚げ。稀代の発酵学者が描く『少年時代』」

小泉文豪の小説には、舌が勃起してしまうくらいに、これでもか、これでもかと、大牢の滋味が登場する。作家、小泉武夫は密かに直木賞を狙っているのではないだろうか。

(構成:島地勝彦、撮影:立木義浩)

* * *

シマジ: 小泉文豪、お久しぶりです。

小泉: 文豪ときましたか。相変わらずシマジさんの過剰なるリアリズムは健在ですね。

シマジ: いまや発酵学の泰斗と紹介するよりも、小説家、小泉武夫先生のほうがいいんじゃないですか。

ボブ: 小泉文豪、まずはタリスカースパイシーハイボールで乾杯しましょう。シマジさん、いつものように音頭を取ってください。

シマジ: 承知しました。わたしが「スランジ!」と言いますから、みなさまは「スランジバー!」とご唱和ください。いいですか、それでは、グラスを高く上げて、スランジ!

一同: スランジバー!

小泉: このタリスカースパイシーハイボールはいつどこで飲んでも美味しいですね。でも西麻布のシマジ食堂「コントワール ミサゴ」でヒグマの肉と一緒に飲んだ、あのときの味がいまだに忘れられません。

シマジ: 小泉文豪の舌の記憶力も並々ならぬものですね。いまやミサゴは北海道から常時ヒグマの肉が送られてきて、ついに1年中いつでも食べられるヒグマ専門店になってしまいました。

ボブ: ぼくも一度シマジさんに連れて行ってもらったんですが、生まれてはじめてヒグマの肉を食べましたが、たしかにタリスカースパイシーハイボールと相性がよかったです。あのヒグマの肉はドングリとかクリとかクルミの香りがしました。

シマジ: あのナッティな香りが堪りませんよね。それから自然界で育ったヒグマの脂身がまた秀逸です。

小泉: すべての動物の肉の味はその動物が何を食べているかで決まります。シングルモルトはどうやってそれぞれの味の違いを出しているんですか。

ボブ: それはやっぱり、シングルモルトを作っている環境が強く影響してくるようです。

小泉: タリスカーのラベルには“made by the sea”と書いてありますね。

ボブ: この“by the sea”というのは、海のそばで作られたという意味と、海によって作られた、という2種類の意味があるんですよ。

小泉: なるほど、母なる海の力によって育まれた味、ということですね。タリスカーはスコットランドのスカイ島で作られているんですよね。

ボブ: はい。以前はタリスカーがスカイ島で唯一の蒸留所だったんですが、いま新しい蒸留所が建設中なので、唯一とは言えなくなってしまって、スカイ島で最も歴史のある蒸留所と言っています。

シマジ: でもこの間、若くて美人のダイアン所長がはじめて来日したとき、「スカイ島周辺にもっと新しい蒸留所が沢山出来て、アイラ島のように観光地化が進めば理想的だ」というようなことを言っていましたよね。

小泉: それはタリスカーによっぽど自信がある証拠じゃないですか。

シマジ: それもありますし、スカイ島まで足を伸ばすには、アイラ島に行く3倍ぐらいの時間と労力が必要ですから、蒸留所がたくさん出来れば観光地として発展するかもしれない、という夢があるんじゃないですかね。

海が育んだシングルモルト スコッチウイスキー
タリスカー 10年(TALISKER 10 YEARS)

スカイ島が誇る、金色の蒸留酒。ピートと海潮の力強い香りとスモーキーな甘さを持ち合わせた、まさに男性的なモルトです。爆発的かつ複雑な香味の特徴が人々を惹きつけてやみません。