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大腸、肺、胃…がん経験者が語る「こんな思わぬ前兆がありました」

こんなサインが現れたら要注意

ただの痔だと思っていた

平成が終わる直前の4月29日。高橋尚子さんや有森裕子さんを五輪メダリストへと育て、マラソン界の「名伯楽」と呼ばれた小出義雄さん(享年80)の告別式がしめやかに行われた。

お別れに訪れた多くの関係者の中には、小出さんを恩師と慕う、日本女子長距離マラソン強化部長の金哲彦さん(55歳)の姿もあった。

プロランニングコーチとしても活躍する金さんは、現在放送中のNHK大河ドラマ『いだてん』でマラソンの指導も行っている。そんな金さんだが、あと一歩遅ければ、師と仰ぐ小出さんより早く亡くなっていた可能性もあった。

金さんに大腸がんが発覚したのは42歳のころ。働き盛りと言われる年齢だ。ステージⅢで、がんが大腸の外にはみ出すほど進行していた。金さんが当時を振り返る。

「自覚症状は確かにありました。僕は1年に一回は人間ドックを受けていたのですが、2年続けて便に血が混じる『便潜血』の項目にチェックが入っていたのです。

診断書には『要再検査』と書いてあったのですが、『どうせ痔だろう』と勝手に自己判断して、忙しさから再検査を受けずにいました。

これは私だけではないと思いますが、スポーツマンは、みんな体力に自信があるので、自分が病気になるなんて思ってもみないわけです。

でもその過信の結果、大事ながんのサインを見落としてしまっていた。もっと早く見つけることができたはずなのに……」

便潜血はあったものの、特にそれ以外の目立った症状はなかった。ところが、しばらくすると身体にこんな異常が出てきた。

「突然、平衡感覚がおかしくなってフラフラしたりすることが増えました。でもランニング中はその症状は出ず、普通にしているときにだけ出るのです。念のため脳ドックを受けたのですが、異常なし。

僕自身も自律神経失調症か、もしくは男の更年期障害かと思い、病院ではなく鍼治療に通っていました。

これは後で先生に言われたのですが、じつはこのとき大腸がんにより腸から出血していたため、貧血を起こし、それが原因でめまいやふらつきが起こっていたそうです」

'05年には、講演中に呂律が回らなくなり、意識を失い、救急車で病院に運ばれてしまう。

「脳出血や脳梗塞の可能性が高いと、脳のCTを撮ったのですが、やはり異常なし。誰もが脳の病気を疑う症状でしたので、まさか大腸がんから来る貧血だったとは思いもしませんでした。

その翌年の'06年、ついに下血。肛門から大量出血し、そこでやっと大腸がんが発見されました。

当時の僕は『病気になれば人生の負け』という気持ちが強かった。だから、異変があっても見て見ぬふりをしていました。でもそれは大きな間違いだったことを思い知らされました」

 

金さんのように自覚症状がありながらも、それががんのサインと気が付かずに放置してしまうことはよくある。

日本消化器学会認定専門医で松生クリニック院長の松生恒夫氏は、大腸がんの兆候についてこう語る。

頻繁に便秘になる、あるいは下剤を飲んでも治らないような便秘が10日間以上続くと注意が必要です。それ以外にも下痢軟便便が細くなったり、トイレに行った後も残便感がある排便不良も大腸がんの兆候としてよく言われています。

腹痛やすぐおなかが張るようになったと訴える患者さんもいます。腹圧がかかってくるとガスがたまりやすくなり、便やオナラが出なくなる代わりにゲップが増える傾向があります」