「釣り初体験」は
「ひとりお泊り初体験」

とは言え、これはそろそろ連れて行くしかない、でも身内で釣りが趣味の人間はいない、どうしたものかと思いあぐねている、とそんな事情を知って、釣り好きの同級生のママ友に「うち、毎週末夫が息子を連れて海釣りに行っているから、朝早くても良ければ今度一緒に連れて行くよ!」と、お誘い頂きました。

早くても何でも釣り好きの経験者と行けるなんて、こんなありがたいお話はありません!「ぜひ、お願いします!!!」ということで、早朝の出発に備え前日の夜から息子を預かってもらうことになりました。

息子にとっては“初めての海釣り”に加え、“初めてのお友達の家での一泊”。
長男にとって“初めて”ということは、母親の私にとっても“初めて”です。初めてお友達の家に息子を泊めてもらい、お友達のパパに息子を一日託すのです。

リュックにパジャマやもしもの時の多めの下着、着替えや釣り中にお友達と食べるお菓子を詰め、近所の和菓子屋さんで手土産を買い、お友達の家へと向かいました。
「ちゃんとご挨拶するんだよ!ご飯を食べるときは左手も出す!寝る前にトイレに行ってね!リュックのここに着替えが入っているから。ちゃんと○○君のお父さんとお母さんの言うこと聞くんだよ!」などなど……。

もうこちらが心配でしょうがない。
大丈夫かな~。緊張しているんだろうな~。寝られるかな~?
そんな私の思いなんぞ息子はもちろん知る由もなく、ママ友からは「今二人でお風呂に入っているよ~!」とか、「ゲームしてます。」「もう電気を消して寝る態勢に入っているんだけど、真っ暗な部屋からはしゃぎ声が絶えない……」なんて連絡が。

楽しんでいるんだな、あんなに行く前は緊張していたのに。

一日いても釣れない日もある、そんな話を聞いていたので、もしかしたら初めての海釣りで「もう釣りはいいや!」と言うかもしれない、と危惧していましたが……
もう釣れなくてもいいか、こんなに楽しい夜を過ごせたのなら、と。

そんな私にとっても“初めて”の夜を越え、翌日の昼過ぎ、ママ友からキスと鯵が一匹ずつ釣れたとの連絡が!!
おおお~~凄い!凄い!!
送られてきた、満足そうに釣れた魚を掲げポーズをとる息子の写真を何度も何度も眺め、こちらも充足感に浸っていたのですが……。

魚が釣れたってことは……

ん?まてよ。

釣れたということは、この魚を家に持って帰ってくるってことですよね?
持って帰ってくるってことは、この魚をさばかなくてはいけないってことですよね??
誰がさばくって……この私ですよね?!

うおーーー!!

お恥ずかしい話ですが、魚なんてさばいたことがありません!スーパーで切り身を買って食べるしかしたことないのに!!
しかも、私は人間以外の犬から猫から羊から山羊から魚も全て、理性を持たない生き物が苦手なんですよーー!!触ることも出来ないのに!!

ママ友からは「大丈夫、ネットに山ほどさばき方がアップされているから。息子のために頑張れ!」と。

そうか、これが男の子の母になるということか。
急ぎネットでさばき方を何度も確認し、夕食がダメになった時のことを考えて念のためスーパーで鶏肉も確保し、夕方息子を迎えに行きました。

私同様、普段散歩している犬の横を通るだけでビビッている息子が、お友達の飼い犬を抱っこして玄関に現れたときは、一晩でこんなにも変わるのか?と、驚きつつ、保冷剤と共にビニール袋に入ったキスと鯵を受け取りました。
こ、これか!

鱗の感触とか、匂いとか、ううう、想像するだけで……。
帰宅するまで魚たちをなるべく身近に感じたくなく、鼻呼吸をやめ、口呼吸へと移行。何の意味もないんですが。

帰宅し、意を決して「いいかい、息子達。これからお母さんは初めて魚をさばくので、君たちの相手はできない。夕食ができるまで、なるべくお母さんに話しかけてはいけないよ」と宣言し、いざ、鯵とキスとの初めての戦いへ!!