「お金とは何か」日本史で考えると、その本質がこんなにクリアになる

最新理論「MMT」と仮想通貨
飯田 泰之 プロフィール

文化人類学者のデヴィッド・グレーバーは、貨幣のない世界における交換において負債の果たす役割に注目している1。例えば、漁師君が農家氏に魚をプレゼントしたとき、贈り物を受け取った農家氏には「いつかお返しをしなければならない」という負債が生まれる。収穫期に漁家君に相応の小麦をプレゼントしたとき、債権・債務関係が解消されるとともに、商品の(時間差での)交換が行われるというわけだ。

マルセル・モースが『贈与論』で示したように、贈与と返礼を通じた交換は歴史的にも地理的にも世界で広範に観察された現象である。ここでは負債、または負債感が交換の仲介役、つまりは一種の貨幣としての機能を果たしている。

 

日本で貨幣はどう根付いたか

負債が交換仲介機能を果たし得ることを確認すると、MMTにおける貨幣の位置づけを理解することができる2

現代の貨幣、例えば紙幣や銀行の預金残高はなんら商品としての価値を持たない。このような制度の元で貨幣の価値を担保するのは、それが政府の負債としての性質を有しているためだ。現代の貨幣は、それによって税金を納めることができるという税金クーポンとしての性質をもつ。政府への支払いに用いることができる債券であるから、これを政府側から見れば負債というわけだ。

政府負債としての貨幣は社会にどのように供給されるのだろう。その供給は政府が貨幣という負債によって支出を行うとき――つまりは政府が貨幣を使うことによって行われる。

現代経済の中で納税手段としての貨幣(tax driven money)が政府支出によって供給(spending first)される状況に気づくのは難しい。すでに我々の経済・社会は貨幣の存在が浸透しきっているため、「最初の貨幣がどこから供給されたか」が見えなくなっている。このような視点、状況を観察するフレームワークを転換する3際には、「これまでにないタイプの貨幣」が社会に導入されたときの事例が参考になるだろう。

*1 グレーバー,デヴィッド(2016),『負債論 貨幣と暴力の5000年』,酒井隆史監訳,高祖岩三郎・佐々木夏子訳,以文社.
*2「MMTとは何か-L. Randall WrayのModern Money Theoryの要点」(朴勝俊,Economic Policy Report 2019-12,ひとびとの経済政策研究会)はMMTの主唱者による入門書を要約した内容でありMMTの概要を学ぶのに好適である.
*3 Mitchell, W.F. (2013),’ How to discuss Modern Monetary Theory,’ Bill Mitchell -billy blog, 2013.11.5.  (邦訳)にあるように,MMTの少なからぬ部分は新理論を提示するというよりも,現実の貨幣経済を理解するフレームワークとしての性質が強調されることが多い.