愚策!?総務省肝いり「分離プラン」でも携帯料金が改善されない理由

3大キャリアの新料金プランを読み解く
西田 宗千佳 プロフィール

携帯料金はなぜ、いつまでもややこしいのか?

先ほども述べたように、携帯電話事業者のプラン変更によって、「電話料金がわかりやすく、安くなったか」というと、決してそうではない。分離プランによって、多少は見通しが良くなるかもしれないが、実際問題として、割引などがなくなるわけではない。

消費者はもちろん、「消費者に人気のある端末」をもつメーカーと、それを扱いたい携帯電話事業者の各者が、割引の存続を望むからだ。

わかりにくさの元凶は、各携帯電話事業者が「さまざまな割引を勘案した、最も安い値段」をアピールすることにある。その最安値を実現するには、家族割引や光回線の同時利用割引など、条件が多数課されるのがつねだが、すべての人に適用できるものではない。

そして、過去の割引キャンペーンの状況によっては、新プラン移行でそれらが無効になり、割高になる場合さえあるのだ。

携帯電話利用に関わるベースの料金が安くなれば、誰もが等しくシンプルな低価格を実現できる。しかし、携帯電話事業者側からみれば、それはなかなか難しい。

サポートや販路などで割り切った施策を採用し、大手とは異なるサービス形態をもつMVNO(仮想移動体通信事業者。実際には正しくないが「格安スマホ」などともよばれる)ならば、料金は下げられる。だが、総花的なサポートとインフラ維持が必要不可欠な大手3社は、実際問題として値下げに高いハードルが待ち受けているのだ。

【写真】総花的なサポートとインフラ維持が必要不可欠な大手3社は高いハードルが待ち受けている
  総花的なサポートとインフラ維持が必要不可欠な大手3社には高いハードルが待ち受けている photos by gettyimages

「安く」「公平に」だけでは改善されません

すべての消費者が、自身の通信の利用状況や端末の好みを把握し、賢く事業者を選別できるなら、解決可能だろう。だが、世の中そう単純にはできていない。

現状で、総務省の指導が効果的にはたらいているか、というとそうは思えない。

たとえば、「料金をプロモーションする際、一部を対象としたキャンペーン価格でのアピールを禁じる」だけでも相当に見え方は違ってくるのだが、そうはなっていない。分離プランにこだわるのは、正直意味がないのではないか。

現在は、携帯電話事業者で端末が売れ残り、それを安売りしてさばく際にも、総務省への「お伺い」が必要になっているという。そこまでして「端末の売り方を縛る」ことに注力しても、消費者にとってプラスの結果が生まれているとはとても思えない。

携帯電話事業者も、複雑なままのプランを良しとしているわけではない。過去には「一生懸命安くしようと考えた人だけが得をする」ような複雑さが横行していたが、各社の最新のプランは、そこまでひどくはない。逆に、「がんばって安くなるよう工夫して契約していた人には、あまり得な部分がない」状況ともいえる。個人的には、この点は「まあ、しょうがないのではないか」と考えている。

「安くしろ」「公平にしろ」と訴えるだけでは意味がない。いかに「シンプルに多くの人が適切なプランを選べるか」という実効性を高めるために、何ができるかを考えるべきだ。

そういう意味では、NTTドコモが今回、ホームページ上に用意した「しっかり料金シミュレーション」というサービスが評価できる。携帯電話料金のシミュレーションを行うサービスだが、これまでのものとは違う点がある。

それは、NTTドコモとの契約時に登録した「dアカウント」を使うことで、自分の契約状況を実際に反映し、直近3ヵ月の利用状況まで加味して料金を指示してくれることだ。単に新料金プランを提示するのではなく、「あなたは端末の割引サービスが残っているので2020年6月まで変更は待つべき」とか「あまり使っていないのでより安価なプランへ移行すべき」といった、新料金プランにこだわらない、きわめて誠実な答えが表示されるのだ。

そもそも非常に複雑なシミュレーションであるため、何回線も契約して工夫している人の場合には、正しいとはいえない結果が出ることもあるようだ。また、dアカウントを憶えていない人には使えない、という欠点もある。だが、現実的な「料金把握のシンプル化」という面で、こうした施策は重要だ。

秋に新規参入を検討している楽天は「料金プランを大胆にシンプルなものにする」と明言している。それもまた、差別化の1つだ。

正直なところ、総務省は、変に携帯電話事業者を縛るのではなく、「公正表示」や「公正競争に必要な企業間でのルール」などに特化して、事業者の施策にはあまり口出ししないほうがいいのではないか──。そんな印象を強くした今回の料金プラン変更だった。

【写真】楽天も大胆なプランを検討
  複雑なままのプラン、事業者も良しとしているわけではない。新規参入を検討する楽天も「大胆にシンプルなものにする」と明言している photo by gettyimages