愚策!?総務省肝いり「分離プラン」でも携帯料金が改善されない理由

3大キャリアの新料金プランを読み解く
西田 宗千佳 プロフィール

「1円スマホ」の代金は誰が負担していた?

携帯電話事業者が料金体系の変更に着手しなければならなかった理由は、総務省からの度重なる「指導」にある。

特に、今回の「分離プラン」を軸にした施策は、5月10日に成立した電気通信事業法の改正に基づいている。政令指定と改正法の施行は夏以降が予定されており、今回のプラン変更はそれに先んじて行われたものだ。

分離プランの元になった考え方は、簡単にいえば、「携帯電話料金の複雑化と不公平化は、携帯電話の端末料金を通信料金で割り引く制度がもたらしているので、それを禁止すべき」という主張である。

前述のとおり、現在はまだ、携帯電話を「携帯電話事業者」から買っている人が多数派だ。サポート面を考えても、携帯電話事業者から買うこと自体は、決して悪いことではない。

携帯電話事業者としてはそれを活かし、長期契約をしてくれた人の端末購入料金を割り引く、端末の購入を条件に通信費を割り引く、といった施策を展開してきた。「24ヵ月契約でスマホを買う代わりに、毎月の支払額から本体料金が割り引かれる」「特定の端末を買うと毎月通信料金が安くなる」「特定の端末を買う場合、長期契約をすると本体が店頭で0円や1円で買える」といったパターンがこれにあたる。

これら割引策は、携帯電話の端末代金の一部を携帯電話事業者が負担しているようなものだから、ひんぱんに携帯電話を買い換えない人には損になって不公平であり、料金プランの複雑化を招いている……。

総務省とその諮問を受けた有識者会議はそう結論づけ、競争を加速して消費者の負担を減らすことを目的に、分離プランの強制が行われたわけだ。

とはいうものの、分離プランの導入で何が起きたかは、現状では正直、見えにくい。

KDDIとソフトバンクは、すでに昨年のうちに「分離プラン」を導入済みだ。過去に購入した人はともかく、現在の料金体系では、「端末費用の一部を通信費から割り引く」ことはなくなっている。NTTドコモも、今回の新プランでそうした割引はなくなった。

しかし、「端末とセットでの通信回線の販売」がなくなったわけでも、「携帯電話事業者による携帯電話端末の割引販売」がなくなったわけでもないことに注意が必要だ。禁止されたのは、あくまで「通信契約を前提とした割引」であり、携帯電話事業者による販売や割引が禁じられたわけではないからだ。

「24ヵ月契約縛り」といった契約形態も、携帯電話端末の割引額で契約期間を縛ることは禁じられるが、長期契約割引そのものが禁じられたわけではない。

【写真】セット販売や端末の割引販売がなくなったわけではないことに注意
  「端末とセットでの通信回線の販売」や「携帯電話端末の割引販売」がなくなったわけではないことに注意したい photo by gettyimages

ドコモよりソフトバンクの端末が割高な理由

結果的にどうなったか?

じつは、携帯電話の価格が「見かけ上高くなる」形になっている。特に明確なのはソフトバンクで、今夏向けの新機種で比較すると、ソフトバンク経由で販売される端末の料金が他社より高くなっている。

たとえば、Googleの「Pixel 3a」は、SIMロックフリーのものをGoogleから買えば4万8600円。それに対して、ソフトバンクは5万7120円とかなり高い。NTTドコモの場合、36回払いで合計は4万6656円となっていて、その差はさらに広がる。

ハイエンドスマホであるソニーモバイルの「Xperia 1」は、ソフトバンクだと13万6320円、NTTドコモは10万3032円と、かなりの違いだ。NTTドコモは、分離プランを前提に「端末販売の利幅を削って」(NTTドコモ担当者)販売金額を低くしている。その結果が反映されているのだ。

だが、額面だけで単純に判断できないのが面倒な点だ。

NTTドコモは今回、「36回払い」という新しい分割払いを設定した。そしてさらに、ハイエンドスマホを対象とした「スマホおかえしプログラム」というキャンペーンも用意している。

これは、36回払いで販売したハイエンドスマホを、買い換えなどの理由で使用が終わった後にNTTドコモに返却すると、最大12ヵ月分の支払いが免除される、というしくみだ。本体を返すだけで「実質12ヵ月分が割り引かれる」のである。

加えて、NTTドコモは前述のとおり、販売金額をいくぶん割り引いている。これも、「もともと48回払いで設定されていた金額のうち、12ヵ月分を値引いて売る」と発想を変えれば、納得できるのではないか。

しかも、このキャンペーンは「回線としてNTTドコモを使っていることは条件にしない」ので、途中で他社に乗り換えても適用される。

対するKDDIとソフトバンクは、「端末の返却を条件に、24ヵ月後以降の端末の割賦支払いを免除する」サービスを展開している。これは分離プラン導入後でも適用可能で、端末を「24ヵ月利用を条件に、実質半額程度の支払いで乗り換えていく」ことができなくなったわけではないのだ。