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「高齢になると賃貸に住めない」問題に備えて私たちが準備すべきこと

定年延長に追いつかない住宅政策

政府が70歳まで雇用を維持するための法整備に乗り出した。年金財政の悪化を背景に、生涯労働政策に舵を切ることは既定路線となっているが、一方で、住宅など多くの制度が一生涯働くことを前提にしていない。生涯労働が避けられない以上、住宅政策についても見直しが必要である。

定年延長に住宅政策が追いついていない

政府は2019年5月15日に開催された未来投資会議において、70歳までの雇用に努力義務を課す方針を明らかにした。高齢者雇用安定法を改正し、現在65歳までとなっている定年を70歳まで延長するほか、複数の選択肢を用意する。

現在、企業は希望する社員に対して、何らかの形で65歳まで雇用することが義務付けられている。今回、検討されている法改正では、70歳まで雇用を延長することに加え、他企業への再就職支援やフリーランスで契約する際の資金提供、起業支援といった項目が検討されている。70歳までの雇用となる場合、体力的な問題もあるので、雇用形態を柔軟にする必要があることから、選択肢を拡大した。

 

一連の措置はあくまで努力義務だが、いずれ義務化される可能性は高く、これは事実上の生涯労働制へのシフトと考えてよい。多くの人は「一生働くなんて嫌だ」と思っているかもしれないが、年金減額がほぼ確実な情勢であることを考えると、これは避けられない措置だろう。

政府は年金財政の悪化という切羽詰まった問題があるため、法整備を急いでいるが、他の制度も含めて、生涯労働制の準備が出来ているのかというとそうではない。特に問題となりそうなのが、諸外国に比べて貧弱ぶりが際立つ住宅政策である。

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日本の住宅政策は国民に良質な住宅を提供するためというよりも、事業者支援や景気対策というニュアンスが強く、新築住宅の建設を最優先する仕組みとなっていた。このため良質な賃貸住宅が供給されず、新築についても粗悪な住宅が多く、国民の基礎インフラとしては貧弱な状況となっている。

だが一生涯労働を続けることを前提にした場合、こうした新築一辺倒の住宅政策の多くは機能しなくなる可能性が高い。旧態依然とした風潮が残り、事実上、高齢者が締め出されている不動産賃貸の商慣習について見直す必要があるだろう。