先天性四肢欠損として生まれた乙武洋匡氏が、テクノロジーの最先端を行くロボット義足をつけて歩こうとしていることをご存知だろうか。「乙武義足プロジェクト」と名付けられたこの挑戦は、エンジニアの遠藤謙氏が長年の研究の中で乙武氏に提案したものだった。

プロジェクトには、エンジニアの遠藤氏のみならず、研究者、デザイナー、義肢装具士、理学療法士と多くのプロフェッショナルたちが参加している。今回は義肢装具士・沖野敦郎氏にスポットを当てる。沖野氏よって乙武氏の義足が作られる過程と、同氏の義足への思いを乙武氏がリポートする。

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義肢装具士沖野敦郎氏との出会い

「乙武義足プロジェクト」が本格始動する。

その記念すべき第一歩は、「ソケット」作りだった。義足は、足の断端を包み込む「ソケット」とくるぶしから下の「足部」、その二つをつなぐ「パイプ」でできている。私のように膝から上も欠損している場合に装着することになる大腿義足は、さらに膝の役割を果たす「膝継ぎ手」が必要になる。

遠藤氏、落合氏との面談でプロジェクトへの参加が決まると、すぐに新メンバーが紹介され

「義肢装具士の沖野敦郎と申します」

新宿にある私の事務所に、遠藤氏に連れられてスポーツウェアを着た眼光の鋭い男性が入ってきた。彼の真剣な眼差しに「いよいよ義足に挑戦するのだ」という意識が湧いてくる。遠藤氏からは、「沖野のことはオッキーと呼んでください」と言われたが、初対面の緊張感でなかなか「オッキー」とは声をかけられなかった。

義足の調整をする沖野氏 写真提供/沖野敦郎

義足は「オーダーメイド」

二日間かけて、「採寸」と「採型」を行った。

「採寸」は、断端の形状を測定する作業だ。その断端を覆う、靴下のような役目をするシリコンライナーのサイズも計ったのだが、私は右足が32サイズ、左足が28サイズで、右足の方が太かった。「採型」は、義足のソケットを作るために石膏で断端の型をとる作業だ。沖野氏は、まず左足の断端にシリコンライナーをつけると、その上から透明のラップをまき両手のひらで足の状態を確認した。

一般的な大腿切断者は断端に体重をかけて立つことができず、座骨で全体重を支えている。ところが私は、両足の断端の先で体重を支えて立つことができる。かなり稀なケースらしいのだが、私のソケットはそうしたことも考慮して調整された。まさに、オーダーメイドの世界である。

「ここは痛くないですか?」

沖野氏は何度もそう尋ねながら、ゆっくりと指の位置をずらしていく。断端の先端に触れたときは、「ここに体重がかかります」と教えてくれ、骨の位置をラップの上から青いペンでマーキングした。骨が当たって痛いところなどもチェックする。石膏のモデルからプラスチックのソケットを作るときには、それらのチェックポイントをすべて調整し、私に合ったソケットができあがるというわけだ。