天下りを「知っているのに報道しない」マスコミと記者クラブの罪

読売「異例の1面記事」が示唆すること
松岡 久蔵 プロフィール

理由その②「官僚の給料」

天下りがなくならないもう一つの理由として、給与の問題がある。

キャリア官僚が「働き方改革」の流れに逆行するような激務を余儀なくされていることは、5月14日の記事「経産省20代キャリア官僚『覚せい剤密輸』にちらつくダークウェブの影」でも報じた。

給与についても、次官クラスで年収3000万円といわれるが、常にマスコミの標的になり、有事の際は責任を取らなければならないこと、さらに民間大企業役員の給与を考えれば、それほど高額とは言えない。そもそも、同期でただ一人の事務次官の座をめぐり、熾烈な出世競争が繰り広げられるのだ。

 

争いに敗れる者が大半を占める中で、天下り後の収入が一種の「後払い給与」となっている側面がある。先の全国紙経済部記者はこう話す。

「東大などのトップクラスの人材がキャリア官僚を目指さなくなってきているのは、官界では周知の事実です。若くして年収1億も狙える外資系金融などに比べれば、同じ激務ならどちらを選ぶかは明らか。国費留学目的の不埒な輩が外務省を目指すケースも増えています。

例えば、日本の官僚と比べて権限が圧倒的に大きいシンガポールの官僚は、トップエリートとなると年収1億円ともいわれますが、高級を約束することで人材を確保すると同時に、汚職を防ぐ目的があるようです。

いくら国民が官僚批判、天下り批判をしても、実際に制度設計をするのは彼ら官僚自身ですから、『現役時の待遇をよくして優秀な人材を確保しないと、日本社会全体の損失につながる』という意見にも説得力が出てきます」

日本経済の弱体化が進み、税収で生きる公務員に対する風当たりが厳しくなる中で、公務員の給与引き上げは困難を極めるだろう。とすれば、「奉公」に対する「恩賞」を求める官僚たちのモチベーションは消えるはずもない。かくして天下りは、いつまでも温存されるのだ。