天下りを「知っているのに報道しない」マスコミと記者クラブの罪

読売「異例の1面記事」が示唆すること
松岡 久蔵 プロフィール

また全国紙経済部記者は、「OB職員は、現役職員との折衝にあたる『ロビイスト』だ」と話す。

「例えば、建設会社が最低落札価格を知りたい場合、天下りを受け入れれば親睦団体などを通して情報交換ができるようになる。役人の世界では入省年次の先輩後輩関係は絶対ですから、現役職員からすれば、OBとの交流を保つことは『自分の再就職先を確保する』上でも合理的な判断となります。

OB職員を雇うこと自体は『職業選択の自由』がありますし、グレーな部分が多い。不正行為に関しても、出身省庁は現役職員に対しては目を光らせますが、OBには限界がある。そこを利用するわけです」

 

「親睦団体」は不正の温床

親睦団体を通じた入札関連情報の漏えいといえば、18年6月の農林水産省をめぐる事案が記憶に新しい。

公正取引委員会は、17年4月に農水省東北農政局発注の東日本大震災復興事業をめぐり、農政局OBを通じ非公表の入札情報を入手したなどとして、独占禁止法違反(不公正な取引方法)で、準ゼネコンのフジタなど31社に立ち入り検査を行った。

この結果、同農政局職員7人が、少なくとも2012年度から16年度の間、ゼネコン3社に天下りした農政局OB5人に対し、入札公告日や技術提案の課題など未公表の入札情報を漏えいしたことが判明。

入札担当者だった50代の男性職員は、職場の元先輩でフジタ(東京)に再就職したOBの依頼を受け、入札に必要な技術提案書を事前に提案し、「こういう風に書いた方がいい」などとアドバイスしていた。金銭の授受は確認できなかったが、情報漏洩については「お世話になっており、断りきれなかった」と説明したという。

最終的に、公取委は押収した資料などから談合を裏付ける十分な証拠を見つけることができず、調査を打ち切った。ただ、重要情報を入手したフジタは自らに有利な条件で復旧案件を受注したため、公取委は正当な入札を妨害したとして、入札を一定期間禁じる排除措置命令を出した。

農水省も職員4人を免職にするなどの懲戒処分を発表した。同省の調査報告書によると、処分を受けた職員のうち1人は、ゼネコンに就職したOBとゴルフを行った際、送迎の謝礼として1万4000円相当の金券を受け取っていたという。

当時の斎藤健前農水相は、記者会見で職員の情報漏えいは認めたものの、現役職員から得た情報交換の場として公取委から「不正の温床」と指摘されたOB職員の親睦団体については、「解散しろと言うのは難しい」と言葉を濁し、歯切れの悪い幕切れとなった。