天下りを「知っているのに報道しない」マスコミと記者クラブの罪

読売「異例の1面記事」が示唆すること
松岡 久蔵 プロフィール

読売新聞によると、山下貴司法務大臣は5月24日の閣議後記者会見で、この公証人問題について問われ、「公募に応募する人数が少ないこともあり、様々な工夫をしているようだ」とした上で、「法律やルールに照らしてどうなのか、国民の疑念を招かないようしっかりと確認し、適切に対応したい」と答えた。

山下大臣が「応募人数が少ない」とする公証人の年収は、検事正の約2000万円と同等かそれ以上とされる。収入源は手数料のみといっても事実上の独占事業であり、高齢化社会で遺言関連のニーズが増えることも予想される中、「なり手がいない」ということは考えづらい。

法曹関係者の間でも、検察OBしか公証人になれないことは周知の事実であり、自らも検察OBである山下大臣が、公募制度が事実上骨抜きにされていることを知らないはずはない。

 

ある全国紙政治部記者は、背景事情をこう推測する。

「今回の報道が、検察の勢力を削ぎたい政治家にとってプラスに働くのは間違いありません。そもそも、2002年に公証人が公募制になった背景には、『公証人が検察OBの天下り先になっている』との批判が高まったことがあったわけですから。

今回の報道についても、検察関係者やOB、人事課がしっかりと取材に応じていることもあり、『何らかの政治力が読売上層部にはたらき、記事が掲載された』という、まことしやかなウワサが一部の永田町関係者の間では囁かれているほどです」

なお、5月28日現在で法務省のホームページには1週間前の5月21日の分までしか閣議後記者会見の概要が掲載されておらず、会見の動画もこれまで全くアップされていない。他省庁が即日か遅くとも翌日には動画と概要をアップするのに比べれば、情報公開の姿勢に疑問を持たざるを得ない。

天下りがなくならない理由①「用心棒」

長年批判にさらされ続けている天下りが根絶されないのは、それなりの事情がある。

まず、天下りした検察・警察・中央省庁のOB職員は、現役職員にアプローチしたい業者にとって有益な存在であることだ。あるベンチャー企業の経営者はこう話す。

「これから上場しようというベンチャー企業、例えば製薬ベンチャーなら厚労省になりますが、厚労OBを受け入れるだけで担当の課長に会いやすくなるなら、顧問料として年1000万くらい払うでしょう。また、許認可など実務面で睨まれないようにするための『用心棒』という側面もあります。当局から睨まれないための必要経費というわけです」