天下りを「知っているのに報道しない」マスコミと記者クラブの罪

読売「異例の1面記事」が示唆すること
松岡 久蔵 プロフィール

マスコミがあえて報じない「公然の秘密」といえば、田中角栄元首相をめぐるロッキード事件が有名だ。最初に立花隆氏が『文藝春秋』で疑惑を報じた際、当時の新聞各紙の角栄番が「こんなもん、全部知ってるよ」とうそぶいた、というエピソードが残っている。いうまでもなく、立花氏の報道はのちに一大センセーションを起こした。

なぜ、このような「公然の秘密」が生まれるのか? 先の週刊誌記者が解説する。

「結論からいうと、当局の機嫌を損ねると記者は情報がとれなくなり、他社に追いつけなくなるからですね。

 

これが顕著なのが、今、記者クラブメディアの最後の既得権益と言われる警察、司法、永田町の3つ。ここはいまだに、週刊誌やフリーがいくら頑張ってもなかなかインナーに入れない『ムラ』なんですよ。当局に自前の取材源がいない限り、コアな内容はクラブに所属する記者に代わりに取材してもらうしかありません。

司法クラブに限って言うと、まず起訴状に書かれた裁判事実などの細かい事実確認からして、クラブ員でないと裏取りすら難しい。そういう排他的な雰囲気の中で、大手メディアは組織的な天下りの事実を知っていても、『自主規制』で報じないケースがほとんどです。

警察や司法クラブの記者は『いかに当局と仲が良いか』を競っているのが実情なので、組織利権に手を突っ込むような記事を書くのは、会社全体としての覚悟が問われます。実際、今回の読売報道について後追いした社はどこもありません」

なぜ今、記事になったのか

しかし、これまでこのような「公然の秘密」とされてきた公証人への天下りが、なぜこのタイミングで大々的に報道されたのだろうか。在阪の全国紙社会部記者はこう分析する。

「読売新聞の報道が出て、まず思ったのは、検察が弱体化しているということです。

検察はかつて『最強の捜査機関』と呼ばれ権勢を誇り、記者のニュースソースとしても絶対的な存在でした。しかし、例えば大阪地検特捜部は2010年の村木厚子元厚生事務次官をめぐる『フロッピー改ざん事件』で解体の危機に立たされました。大阪地検はあの不祥事が起きるまでは月に1度のペースで事件を立件していましたが、その後はペースが大きく落ちて、最近では森友学園事件くらいしか全国的な事件は手がけていません。

東京地検特捜部も、かつてのように『政界の闇に切り込む』というイメージが薄れ、有名人をターゲットにした強引な捜査手法があだとなって、むしろ悪いイメージが広がっている。このままいけば東京国税局査察部、通称マルサに『最強』の看板を持って行かれるだろう、と言われています」