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今こそ問われる「Facebookをどうするか」という大問題

共同創業者による「分割提案」の衝撃

今こそFacebookを分割せよ

2019年5月9日、New York Timesに“It’s Time to Break Up Facebook”というタイトルの、6000ワードからなる長文のエッセイが掲載された。

今こそFacebookを分割せよ、と主張するこのエッセイの著者の名はクリス・ヒューズ。ハーバード時代のマーク・ザッカーバーグのルームメイトのひとりであり、その縁でFacebookの共同創業者となった人物だ。

このエッセイ自体は、New York Timesが企画した“The Privacy Project”という、オンライン時代のプライバシーのあり方を考えるシリーズの中の一寄稿でしかなかったのだが、しかし、Facebookの創業者のひとりが分割案を提案したため、その反響は大きく各方面に様々な波紋を投げかけた。

ハーバード時代のマーク・ザッカーバーグ(左)とクリス・ヒューズ(右)〔PHOTO〕gettyimages

最も素早い反応を見せたのは、民主党の大統領予備選に立候補しているエリザベス・ウォーレン上院議員(マサチューセッツ州)。公開直後にTwitter上で即座に賛意を表明した。

以前にも紹介した通り、彼女は今年の3月、SXSWが開催されるタイミングで、シリコンバレーの巨大プラットフォーム企業の分割を提案しており、その筆頭がFacebookだった。この提案は大統領選に向けた公約の一つとして発表されたものであり、その点で、ヒューズのエッセイは、まさに我が意を得たり、というものだった。

ウォーレンの他にも、同じく大統領選に立候補しているカマラ・ハリス上院議員(カリフォルニア州)も分割案の支持を表明した。ジョー・バイデン元副大統領も分割案は考慮するに値するという発言を残している。Facebookの扱いは、2016年以来、アメリカ政界の懸案事項になっている。

だが、その一方で、今回ヒューズが提案した分割案については反論も多い。状況の分析においても、計画の実効性においても適切さを欠いていると、疑問視する声も聞かれる。

そのあたりについては後述するが、しかし、創業者のひとりが分割案を提出したことで、一種の内部告発のような形に見えるため――といってもヒューズは創立から3年後の2007年にはFacebookを去っているのだが――、これで少なくとも政治の場で公に議論するに足るイシューであることが再確認されたことになる。

いうまでもなくFacebookは、分割の必要性を否定している。

ザッカーバーグとしては、社会的規制は受け入れても、企業分割には応じない、というのが、かねてからの基本方針だった。

今年1月には、傘下にあるInstagram(写真投稿アプリ)とWhatsApp(メッセージアプリ)をFacebook本体と統合するという計画を公表したばかりだ。

だが直接的には、どうやらこの発表が、Facebookに対する不安に火をつけてしまったようなのだ。というのも、ヒューズの分割案とは、まさにこの統合案を阻止しようとするものだからだ。

 

「権力」を増大させないために

ヒューズのエッセイの骨子は、Facebookはすでにソーシャルネットワークの独占企業となっており、これ以上その「権力」を増大させないためには、それぞれ2012年と2014年に買収手続きを終えたInstagramとWhatsAppの合併を無効にし、独立法人として分割させる。加えてFacebookに限らずプライバシー保護などの社会的要請に応えるために、連邦政府による監督機関を設置すべきだ、というものだ。

つまり、Facebookは市場で支配的地位(dominance)を築いているにもかかわらず、市場の動勢に基づく説明責任を課せられていない、いわば野放しの状態にある。だから、まずはこれ以上ソーシャルネットワークによるサービス市場で優位性を増大させないように、InstagramとWhatsAppの合併を解消させ、3社を資本関係のない独立会社にする。そうして、他のソーシャルネットワークサービスとともに、市場で競争させるべきである、というのだ。

これがヒューズの分割案だ。