20代で渡仏し、20年住んだのちに家族で帰国、現在は日本在住のエッセイスト、吉村葉子さん。2007年に刊行し、文庫だけで37万部を超えたベストセラー『お金がなくても平気なフランス人、お金があっても不安な日本人』からオンラインで初めて記事を紹介する第7回。

『フランス人は10着しか服を持たない』というベストセラーがあった。ではフランス人はおしゃれは好きじゃないの?といえば、パリコレを考えてもフランスはファッションの中心地、どうやらそうではないらしい。むしろ「おしゃれに見えるならなんでも洋服になる」という逆転の発想が、そこにはあった。

吉村葉子さんの今までの記事はこちらから。

ブランド品は「高嶺の花」

パリの町を歩いていると、ふりかえりたいほどセンスのいい女性たちをよく見かける。だからといって彼女たちは絶世の美女でもなければ、ア・ラ・モードの最新流行で決めているわけでもない。

パリ・コレとかトップ・モードというとパリが発信地のようだが、町ですれちがうパリジェンヌたちは、だれ一人として流行の服は着ていないし、ルイ・ヴィトンやシャネルのバッグの集中地区は、なにを隠そう東京や大阪、神戸といった日本の都市である。それはルイ・ヴィトンが本家本元で見向きもされないからではない。モノとして評価はしても、パリっ子たちの金銭感覚からしたら高嶺の花。自分に似合うかどうかという選択の前では、持つ人を限定せずに生産されたブランド品は色あせる。

古くてもいい、安物でもいい、自分が気に入ったモノならそれでいい世界中で私だけが持っている服だとしたら、それが一番ではないか。

パリジェンヌのおしゃれを分析すると、彼女たちはこだわりの女王に昇格する。

わが国でも、〇〇骨董市、フリー・マーケットとかリサイクルショップを上手に利用する女性がふえている。帰国してそろそろ20年になるが、はじめて念願の東京の平和島骨董市をのぞいたとき、古いキモノを扱うショップの数に驚かされた。

古着をそのままキモノとして着用する女性もいるのだろうが、洋服にリフォームするための生地として、古いキモノに着目している女性たちも多かった。流行をうのみにするのではなく、自分らしい装いを心がけている彼女たちに、私も大いにはげまされたものである。東京の骨董市をのぞく彼女たちにパリジェンヌたちとの共通点を見た思いがしたからだ。

原宿・東郷神社の着物のリサイクル市は外国人にも人気 Photo by Getty Images

わが国ではブランド品限定の傾向があるようだが、ZOZOやメルカリ、ヤフオク!などのおかげで日本女性も古さにこだわらないモノ選びが、上手になった気がする。

アウトレットでサンプル用に作ったまま商品化されなかった型見本用の服をあえて探し、今ではなくなっている珍しい生地でできた古着欲しさに週末の蚤の市めぐりをする、パリジェンヌの根性と相通ずるセンスが見え隠れしていたからである。

おしゃれの仕方は、大きく分けて二種類ある。

ファッション雑誌の切り抜きのように、流行のスタイルの服を上手に着こなし、ブランド品をさりげなく持つ。彼女たちがおしゃれなことは、万人が認めるにちがいない。もう一種類はオリジナリティー、つまりおしゃれの個性派だ。そして後者こそ、パリジェンヌのおしゃれ感覚と共通する。

固定観念を捨てることが、個性派おしゃれの真髄とパリジェンヌは考える。