最近はユーザーが愛車を選ぶ時に、緊急自動ブレーキ(衝突被害軽減ブレーキ)の装着を条件にすることが多い。クルマは便利な移動のツールだが、交通事故を発生させる重大な欠点を併せ持つ。緊急自動ブレーキは万全ではないが、事故防止の効果は高い。多くのユーザーが関心を持つのは当然で、とても良いことだ。
ちなみに4輪ABSや横滑り防止装置も優れた安全装備だが、ユーザーの関心が高まらず、クルマ造りのプロであるメーカーも装着を進めなかった。そのために国の義務化によって普及した情けない経緯がある。しかし緊急自動ブレーキは、ユーザーが積極的に装着を望んでメーカーも対応した。普及した背景には、緊急自動ブレーキの優れた機能と併せて、交通事故に対するユーザーの危機意識もあるだろう。
軽自動車は価格が安く、安全装備も低水準と思われがちだが、実情はまったく違う。例えばLサイズミニバンのトヨタエスティマ、上級スポーツセダンのスカイラインが装着する緊急自動ブレーキは、歩行者を検知できない。メーカーは歩行者対応を進めてはいるが、今でも未対応の車種が多い。またトヨタ86&スバルBRZ、日産GT-Rなどのスポーツカーは、緊急自動ブレーキ自体が用意されていない。スポーツカーは、高価格車でも、概して緊急自動ブレーキの採用に消極的だ。
ところが軽自動車は、緊急自動ブレーキの装着比率が高い。軽乗用車で装着できないのは、スポーティクーペのダイハツコペン程度だ。そのほかの車種はすべて緊急自動ブレーキを用意して(オプションを含む)、最近は軽商用車のバンやトラックも設定している。
注意したいのは、緊急自動ブレーキにも複数の種類があり、安全性能に差が生じていることだ。