私がずっと守ってきたこと(LiLiCo)

私が18歳で故郷のスウェーデンから日本にやってきたのが昭和の終わり頃。翌年の平成元年に歌手としてデビューしました。だから、日本では「平成」という時代を生きてきたんですが、ずっと憧れていたのは昭和の芸能界でした。だって、日本の祖母が送ってくれるアイドル雑誌を見て歌手を夢見たんだから。

もちろん、時代の流れは元号で区切れるほど単純ではなく、私がデビューした頃はまだ昭和の名残がありました。勝新太郎さんや松方弘樹さんに代表される豪胆でハングリー精神を持つ人がたくさんいたんです。

デビューしたもののまったく売れず、車中で寝起きするホームレス生活を送ったこともありました。そんな私に、「ごはん食べていけよ」とか、見返りを求めずにかわいがってくれたのも昭和の気概を持った人たち。私は世間に名前を知ってもらうまで20年かかりましたが、ハングリー精神を持ち続けられたのは彼らの思いやりに支えられてきたからです。

ところが、最近の日本の社会を見ているとハングリー精神が薄れてしまったように感じる。あらゆることがマニュアル化されて、独自性が強い人は煙たがられてしまうんです。SNSの影響もありますね。多くの情報を簡単に入手できるのは便利だけれど、それで話した気、体験した気になってしまう。コミュニケーション力が低下しているんです。

それでは人の心の動きを察することなどできませんから、思いやりも生まれない。後ろに人がいたらドアを開けたまま押さえるのは欧米では当たり前のことですが、日本人はそれをするどころか、「ありがとう」も言えない人が多いように感じます。

その中で深い思いやりをお持ちだったのが樹木希林さんです。映画コメンテーターとして何度かお会いしているんですが、ある映画のインタビューの時におっしゃったんです。

「あなた、真面目で正論を言うのに見た目が派手だから伝わらないんじゃないかって思っていたんだけど、売れてよかった。安心したわ」

映画のインタビュアーなんて山ほどいるのに見ていてくださったことに感激して、思わず泣いてしまいました。その樹木さんが、「私は感謝をしたらその場で『ありがとう』と言うし、悪いと思ったらすぐに『ごめんなさい』と言うの。だから人との出会いに後悔や心残りはないのよ」とおっしゃっていたのが印象に残っています。

人とのつながりを大切にする。これは先人たちから教わったことであり、私がずっと守ってきたことです。だからこそ今こうしてお仕事ができている。

新しい時代が来てもその大切さを忘れずに、身をもって次の世代につないでいきたいと思っています。(談)