勝負を決するのは戦力よりも戦略(二宮清純)

野球の日本代表がオリンピックで、まだ一度も金メダルを獲ったことがないと話すと、怪訝な表情を浮かべる者がいる。

「あれ、昔、金メダル獲ったことなかったっけ!?」

それは1984年のロサンゼルス大会である。日本は決勝で米国を破り、ドジャースタジアムに君が代を響かせた。だが、この時、野球はまだ公開競技だった。

野球がオリンピックの正式競技として採用されたのは1992年バルセロナ大会からである。2008年北京大会まで続いたが、日本代表の選手たちが表彰台の真ん中に立つことは一度もなかった。

結果は以下の通り

'92年バルセロナ大会・銅メダル

'96年アトランタ大会・銀メダル

'00年シドニー大会・4位

'04年アテネ大会・銅メダル

'08年北京大会・4位

日本人にとって野球は「国民的スポーツ」である。その野球がオリンピックの舞台で一度も頂点に立ったことがないという事実は、ひどくプライドを傷つける。その意味で2020年東京大会は、文字通り日本の野球界にとって威信をかけたオリンピックとなる。

「日本代表と他国にあったのは戦力差ではなく戦略差」

金メダルを逃し続けた理由を、自身もバルセロナ大会で指揮を執った経験を持つ山中正竹侍ジャパン強化本部長は、そう述べる。プロとアマ、現場とフロントが一枚岩になれなかったところに弱みがあったというのだ。

そうした反省を踏まえ、今回は万全のバックアップ体制づくりに向け、余念がない。

指揮を執るのは46歳の稲葉篤紀だ。'08年北京大会では全9試合にフル出場を果たした。

「オリンピックの借りはオリンピックで返す」

待つこと12年、やっとリベンジの機会が巡ってきた。

日本代表のおはこは「スモール・ベースボール」である。機動力や小技をからめ、いかに効率よく点をとるか。

だが、国際試合においてはそれだけでは勝てない。それが稲葉の持論である。

稲葉が代表監督就任時に掲げた標語は「スピード・アンド・パワー」。巧者と大砲がともに持ち味を発揮してこそ相手に脅威を与えることができるというのである。

「北京に出て金メダルを獲れず、リベンジしたい思いがあった。東京で金メダルを獲る喜びをみんなで分かち合いたい」

悲願達成へのカウントダウンは既に始まっている。