亀田誠治が全経験をつぎ込み「無料音楽祭」を開催する背景と本心

令和元年、音楽文化の新時代が始まる
柴 那典 プロフィール

ストリーミングを推奨する理由

――去年から今年にかけて音源を解禁するアーティストが増え、日本でも定額制ストリーミング配信サービスが本格的に普及フェーズに入ってきた印象があります。

そういう時代の流れに逆らうことはできないと思うんです。

定額制のサービスはほとんどが月々1000円ほどで、年間に換算すれば1万2000円。つまり1年間にCDアルバム4枚買う計算です。よくよく考えたら、1年にCDアルバムを4枚買う人は相当の音楽ファンだと思うんです。

だったら、1人でも多くの人に月々1000円払ってもらって、昔の曲から最新曲まで全ての在庫があるようなところで音楽をたくさん聴いてほしい。個人的にはもうちょっと高くてもいいような気もしますけど。

――ストリーミングが普及することで、どういう変化が訪れていると思いますか?

アーティストにとって喜ばしいことは、聴かれた回数がヒットの指標になるということですよね。再生回数というのは本当に公正な数字だと思うんです。

その観点で言うと、発売週の初日、デイリー1位のような指標を狙わなくてもいい。5年、10年かけてヒットする可能性もあるわけだし。瞬発力よりもいかに長く愛される曲を作るかということに注力するようになるわけです。

 

――実際、たとえばカラオケチャートの変遷を見ていくと、00年代後半以降には新曲だけでなく過去の曲が歌われることが増えているんですよね。たとえば中島みゆきさんの「糸」のようにカバーをきっかけに注目を集める曲も増えた。

90年代は音楽業界全体が好景気な時代でしたが、それはいわば流行の中で音楽が消費される時代だった。平成の後半になって、徐々にスタンダードソングとして愛される曲が増えていったということも言えると思います。

そうですね。いかに長く愛される曲を作るかということに注力するようになることで、本当に音楽としてのクオリティがあがるんですよ。僕はこんなに素晴らしいことはないと思っているんです。だから常々ストリーミングを推奨しているんですね。

J-POPが海外に発見されている

――また、ここ1〜2年では、キャリアのあるアーティストが海外で再評価されることが増えています。

そうですね。竹内まりやさんとか細野晴臣さんとか山下達郎さんとか、今までにない形で海外に評価されていますよね。

――たとえばヴァンパイア・ウィークエンドの新作で細野晴臣さんの過去の楽曲がサンプリングされたり、80年代にシティポップやニューミュージックと言われていたミュージシャンの作品が、今のアメリカの第一線のアーティストの元ネタとして使われたりするようになってきている。

これは『ヒットの崩壊』で書いたことでもあるんですが、そもそも「J-POP」という言葉が生まれた由来に「日本のポップスが西洋からの借り物ではなく一つのオリジンになる」という願いが込められていたことを考えると、平成の時代にはなかった、新しいJ-POPの歴史が始まっているようにも思います。

その通りだと思います。CHAIのような新しい世代のアーティストが世界で評価されつつある一方で、そういった過去の作品も評価されるようになっている。

チャートによる瞬発力の「全米制覇」はこれまでは、結局「上を向いて歩こう」しかうまくいかなかったわけですけど、今はJ-POPという文化が、数十年の幅を持って海外に届いていると思うんです。

これまで、松田聖子さんや、ドリカムさんや、(宇多田)ヒカルちゃんや、いろんな人がアメリカで成功しようと頑張ってきたわけですよね。それも、まずは日本で結果を出して、そこから海外に行くという形だった。

でも、今はインターネットのおかげで、世界中にマーケットが広がっている。