アメリカの反リベラル運動に「ゲーム」が利用されていることの意味

NPC=頭空っぽリベラルとは何か?
木澤 佐登志 プロフィール

右翼によるヘゲモニーの獲得

オルタナ右翼の戦略、それは言ってみればミームの拡散による文化的ヘゲモニーの奪取だ。アンジェラ・ネイゲル(Angela Nagle)は、オルタナ右翼とオンラインカルチャーについての著作『Kill All Normies』の中で、かつては左翼のものとされ、しばしば右翼が毛嫌いしていた戦略——文化マルクス主義——を、今やオルタナ右翼は換骨奪胎して自家薬籠中のものとしていると指摘している。

文化的ヘゲモニーは、マルクス主義の理論家アントニオ・グラムシによって定式化された概念である。グラムシは、人々の間における支配的な共通認識——イデオロギー——は、教育や文化のネットワークを通じた人々の社会的コンセンサスの次元に基づいて形成されていると論じた。このグラムシのヘゲモニー理論は、とりわけ68年以降の左翼理論家によって積極的に取り入れられた。

だが一方で、フランスの新右翼(New Right)を代表する思想家で、同時にオルタナ右翼思想の知的水脈のひとつともされ、近年英訳が急ピッチで進められているアラン・ド・ブノワ(Alain De Benoist)がグラムシからの影響を公言しているなど、右翼の側がグラムシの理論を転用するケースが見られるようになる。

 

現在のオンラインカルチャーがオルタナ右翼のミームによって溢れていることは、文化的ヘゲモニーを右翼の側が握りつつあることを示唆しているのかもしれない。オルタナ右翼は、文化の次元に介入することによって、メインストリームの共通認識的な価値観——常識や良識——を侵犯し、あわよくばそれらの価値観の転倒を図っている。その際に彼らが利用するのがミームという媒体なのである。

ミームはウィルスのように拡散していく。それを止めることは恐らく誰にもできない。しかしそのメカニズムを理解することはできる。私たちはミームの時代における新たなリテラシーを身につけることで、オルタナ右翼のヘゲモニー戦略に可能な限り抵抗していかなければならない。

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