アメリカの反リベラル運動に「ゲーム」が利用されていることの意味

NPC=頭空っぽリベラルとは何か?
木澤 佐登志 プロフィール

主要メディアを乗っ取る

ゲーミフィケーション(gamification)という言葉があるが、NPCミームはリベラル批判にゲームのアナロジーや語彙を導入したという点でさながらイデオロギーのゲーミフィケーションといえよう。NPCミームは物事を単純化して考えたいオルタナ右翼に好都合な素材を提供する。

ゲーム情報メディアKotakuのライターCecilia D'Anastasioは、NPCミームは対立する相手を物体、たとえばチェスの駒、藁人形、道具などとみなす、すなわち非人間化(dehumanization)の方法であると批判する。そこにおいて表れているのは、自分と異なる感情や意見を持つ人々に対する共感の欠如、つまり他者性の抹殺である。

中間選挙戦も佳境に入ろうとしている10月を迎えても、NPCミームの増殖を止まらない。ツイッターにはNPCsのアバターをアイコンにした無数のNPCアカウントが大量発生。これらのNPCなりきり(?)アカウントは、表向きは(内面のない)リベラル活動家を装っていたが、中間選挙に関する誤情報(たとえば投票日を一日ズラして拡散させる)やフェイクニュースを意図的に拡散させるなど、いわゆる「トロール」的な活動を通じて秩序に混乱をもたらそうとしていた(オルタナ右翼におけるミームを利用したトロール戦略については前回の記事でも解説した)。

 

こうした動向を受けて、ツイッター社は「選挙に関する誤情報を意図的に流している」としてNPC関連のアカウントを約1500凍結させたと発表した。だがこれでNPCミームが一掃されたわけではなかった。むしろ事態は逆である。

10月16日、ニューヨーク・タイムズが「NPCとは何? インターネットにおけるトランプ支持者の新しいお気に入りの侮辱行為?」と題してNPCミームを取り上げた記事を公開した。

Wojakをアイコンに使ったアカウントが紹介された〔PHOTO〕NewyorkTimesのサイトより引用

この記事はNPCミームの出自や拡散の過程を解説したものだったが、結果的にNPCミームの存在をより多くの人々が認知するきっかけをも作った。事実、ニューヨーク・タイムズがこの記事を公開した日から翌日にかけて、グーグルトレンドが示す「NPC」の検索回数は一気に倍増した(グーグルトレンド)。

メディアはこのようにミームの性質を検討する土台も提供するが、結果的に悪意のあるミームを拡散させてしまうきっかけも提供してしまうという点で両刃の剣となりうる。主流メディアを利用してミームを拡散させることがオルタナ右翼の狙いのひとつであるとすれば、ミームの取り扱いには一層の慎重さが要求されるであろう。

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