アメリカの反リベラル運動に「ゲーム」が利用されていることの意味

NPC=頭空っぽリベラルとは何か?
木澤 佐登志 プロフィール

ゲーマーゲート論争は、オルタナ右翼勃興のきっかけのひとつを作ったともされる象徴的な出来事だが、その際に震源地となったのが4chan、とりわけ政治板(/pol/)と前述のビデオゲーム板(/v/)だった(のちに論争の主戦場は8chanに移動)。

 

リベラル=NPCという図式

さて、以上のような背景を持つビデオゲーム板から生まれた「NPC」だが、2018年の9月、ということはアメリカ中間選挙の期間中、今度は政治板(/pol/)において「研究の結果、ほとんどの人々が内なる声を持たないことが判明(Study finds most people have no inner-voice)」というタイトルのスレッドが立てられた。

同スレッドの投稿者は、心理学の専門誌「サイコロジー・トゥデイ」誌の記事「Not Everyone Conducts Inner Speech」へのリンクを貼っていた。この記事は内的経験を研究する心理学の教授Russ Hurlburtによるもので、学生30人を対象に調査をしたところ「内なる声」(内言)は4分の1の学生にしか起こらなかったという結果報告を含んでいた。

このスレッドに対して、「マジかよ、ほとんどの人間がNPCってことか」といったレスをする者や、「哲学的ゾンビ」のウィキペディア記事へのリンクを貼る者などが現れた。魂の不足論は今度は心理学的に(曲解をされた上で)理論付けされ、内なる声、つまり「内面」を持たない人々がNPCsであるとされた。そして、そのNPCsの数は予想以上に多いとも。

その数日後、4chanにWojak(住人たちの間で親しまれているミームで、MSペイントで描かれたカートゥーンの白人男性キャラクター)をNPC化したキャラクターが現れた。Wojakは「悲しみ」や「怒り」といった感情を表すためによく用いられるミームであったが、NPC化されたWojakはまさにロボットのように無表情で、内面が存在しないことが強調されていた。

NPC化されたWojakのミームはネット上に溢れている

そして、Wojakという体=表象を手に入れたNPCミームは、この時期を境に爆発的に増殖していき、4chanを超えSNSなどにも波及していくことになる。

そう、NPCミームは今やソーシャル・ジャスティス・ウォーリアに代わる新たなリベラル揶揄の符牒となっていた。エスタブリッシュメントの意見を鵜呑みにし、その主張や考えをオウム返しのように一様に繰り返し続けるリベラルたち。リベラルには主体性がないし、真にクリティカルな思考をすることもできない。そう、彼らには内面がないのだ! これがリベラルに反感を抱く4chanの住人とオルタナ右翼の総意であった。

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